第176話

 教育熱心親バカな陛下のお陰で、直ぐに立派な砂場が用意された。場所はいつもの練習場のすぐ目の前だ。砂場を作るに当たって、エマ姫様は新しい花壇を作っていると思われたらしい。しかし出来たものは石の囲いはあるものの、草木は植えられておらずただ砂があるだけの場所。一体これは何でしょう?と興味津々だったらしい。


「では殿下。今日から土魔法の練習を致しましょう。」

「宜しく頼む。ところでジロー、何で砂場なんだ?」

「それはですね、殿下。土魔法の基礎を練習するのに最適だからです。先ずはこうやって団子を作ってみて下さい。」


 俺は手で砂を掘り起こすと丸く固めて団子を作る。それを2つ重ねて雪だるまならぬミニ砂だるまを作って見せた。


「魔法、じゃ無いのか?」

「殿下。魔法を使うために大切なものは何でしたか?」

「・・・イメージする事。」

「はい、正解です。ですから先ずご自身の手で同じものを作ってみて、イメージを作って下さい。」

「わ、私がやるのか?」

「そうですよ。ささ、殿下。ここを掘って団子を作りましょう。」


 最初は途惑っていたギルバート殿下も、やっているうちに砂で造形するのが面白くなって来た様だ。普通、王族のお子様が泥んこ遊びなんてしないからね、市井の子供じゃあるまいし。そこへ行くと、前の世界前世は海水浴に行ったらいい大人が砂の山を作ってトンネル掘って大喜びしてたなあ。


 そんなこんなで、初日は殆ど魔法を使わずに砂遊びで終わってしまった。でも、授業と言う名目で存分に遊べたので満足だったらしい。礼儀作法の授業みたいな堅苦しさは微塵もないから。


 次の授業の日、いつも通り案内されて砂場へやって来ると、どうした事か生徒さんが既にお待ちになってます。しかも何故か人数増えてるし。


「お待たせして、大変申し訳けございません。」

「気にするな、ジロー。私たちが早く来過ぎただけだ。」

「それにしても、なぜここにエマ殿下もいらっしゃるのでしょうか?」


 何でも、夕食の時に陛下から土魔法の事を聞かれたギルバート殿下は、砂遊びの楽しさをコレでもかと語ってしまったらしい。それに喰い付いたのがエマ姫という事だ。曰く、お兄さまだけ楽しい遊びをしてずるい、だそうです。で、駄々を捏ね捲った結果今ここに居らっしゃる、と。イメトレの筈なんだけど、もう砂遊びでいいや。


「エマ殿下、殿下は土魔法使えませんでしたよね。では代わりにお願いしたい事がございます。」


 ここで使っている砂は川底を浚ったもので、ゴミや小石もキレイに取り除かれている。そして水はけがとても良いのだ。前回俺は先に来て水を撒き、砂を湿らせておいたんだ。サラサラの砂じゃあ、流石に団子にならないからね。と言う訳で、姫様には水を撒いて砂を湿らせて頂いた。


 ところで姫様。そのお召し物で砂遊びをされるお心算ですか?後で王妃殿下に叱られても爺は知りませんよ?

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