第174話

(コーラス様。何卒願をお聞き届け下さい。コーラス様。・・・)


 俺も懸命に祈った。コーラス様、応答せよ、コーラス様。


(・・・真摯に祈りを捧げる者たちよ。私は愛と平和の女神、コーラス。疚しい心が無い者には、願いを聞くチャンスを与えましょう。)

 コーラス様、ジローでございます。本日は私めからコーラス様にお願いがございます。


(何だ、ジローか。そう言う事は早く言えよ。)

 今日は何時ものコーラス様と雰囲気が異なる様ですが、如何されたのでしょうか?


(余所行きだよ、余所行き。熱心に祈りを捧げて来るヤツにおかしな返答してたら、あたしの品性が疑われちまうだろう?)

 私には親しく接して頂いている訳ですね。有難く存じます。


(ま、まあな。お前の事はアリアからも頼まれてるしな。)

 しかし、コーラス様は愛と平和の女神様だったのですね。私は輪廻転生を司る女神様だと思っていました。


(これでもあたしはこの世界の主神だからな。でもなぁ、人手不足でワンオペなんだよ。ワンオペ。生も死も、愛も平和も、輪廻転生だって、一人で何でも回すんだよ。)

 それはそれは。お一柱で大変でございますね。私めも微力を尽くしたいと存じます。


(おう、期待しているぞ。お前みたいな使徒アルバイトが居るから、何とかやってられるって感じだな。)

 女神様も何かとご苦労があるものなのですね。


(あたしは学校の成績が芳しくなかったからなぁ。我ながら、良く下級神の試験に受かったと思うよ。良くアリアに教えて貰ったっけなあ。アリアあいつはもっと上級の試験だって一発合格できたはずなんだけどな。なんであたしと同じ下級神やってるのか分かんねぇよ。)

 今度アリア様にお会いした時に、私からもお礼を申し上げておきます。


(・・・。止めておいてくれ。またアリアがこっちに入り浸りになったら困るから。)

 ・・・承知しました。


(なんか話し込んじまったな。そう言う訳で忙しいから、じゃあまたな。)

 お、お待ちください、コーラス様。何卒ヘルツ王国ギルバート殿下の願いを叶えて頂けないでしょうか。ギルバート殿下の風属性を消して、その分を土属性へ上乗せして頂きたく、伏してお願い申し上げます。


(めんどくせ・・・、いや忙しいって言ってるだろ。ったく。)

 ご面倒をお掛けしまして申し訳けございません。


(よしっと。出来たぞ。後で確認しとけよ。じゃあな。)

 御多忙のところお手数をお掛け致しました。ありがとうございます。


*****


 これでギルバート殿下の土属性も強化された事だろう。しかし、コーラス様が愛と平和の女神を名乗られた時は驚いたな。少し前に、エルフの里に死と恐怖をばら撒いた様な気もするんだが・・・。


(あれは事故だよ、偶然だよ。)


 おっと、未だお近くにいらっしゃった様だ。下僕は余計な事は考えないでおこう。さわらぬ女神様に祟り無しっとね。

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