第172話
「それで防衛拠点を構築出来る土魔法と言う訳ですか。」
「こちらから打って出る訳では無いのだ。だからギルバートは防衛力を上げようと考えたのじゃろう。」
「はい、その通りです。父上。過大な火力を持てば周辺国家が警戒します。邪推から軍拡競争になるやも知れません。その点、防衛力特化なら恐れられる事も無いと考えました。」
ロックネイルとかもっとデカい奴とかを撃ち込めばそれなりの破壊力になると思うんだけどなあ。これらは教えない方が良いかな。まあ、当面様子見だ。
「承知致しました。それで、強化するのは土属性として、何の属性を消すのでしょうか?」
「私は風魔法を消そうと思う。正直、私の風魔法はあまり役に立ちそうにないからな。」
「それでは風魔法を消して、その分を土魔法に上乗せさせるという事で宜しいですね。」
「それで良い。よろしく頼む、ジロー。」
ではギルバート殿下の儀式を始めましょう、とそんな簡単には行かなかった。どこから聞きつけたのか、教会の皆さんが我々も儀式に参加させろとねじ込んで来たのだ。曰く、エルフも我々も等しくコーラス様を信奉する者同士じゃないか。曰く、一緒にお祈りするから。曰く、見たって減るもんじゃないでしょ・・・。何処からか秘密が漏れてますよ、宰相閣下。俺の事調べるより、こっちの方がよっぽど重大事ですよ。
「これはコーラス様に祈りを捧げる儀式。我々協会が取り仕切るべきです。」
「えー、だって司祭様も司教様も儀式のやり方なんて知らないでしょ。これはエルフ族のみに伝わる儀式なんだから。」
「きっ、貴様はその儀式のやり方を知っていると言うのか!」
「俺はその儀式に参加して、エルフの秘薬を貰って来たからね。当然ですよ。」
間に陛下と宰相閣下が入る事で、教会の方々には渋々納得してもらった。きっと後で沢山お布施をするから、とか何とか言ってお引き取り願ったのだろう。悪いのは俺じゃないので、司祭様も司教様も恨まないで欲しい。俺も後で協会に行きますから。お賽銭は銅貨1,2枚くらいですけどね。俺、庶民だし。
余計な邪魔が入ったけど、ここからが本番だ。先ず、場所はいつも魔法の練習をしている石造りの建物にした。次に出席者だが、国王陛下、王妃殿下、ギルバート殿下、俺、アンちゃんの5人に絞った。エマ殿下、今回も出番無しですけど仲間外れにしている訳じゃ無いですからね。今回はエリック殿下も宰相閣下も居ないでしょ。ね。
「それではこれから儀式を始めます。本来エルフの巫女が行うところですが、今回はここに居るアンナが代役を務めます。」
俺はアンちゃんに桃とリンゴを手渡した。ここはひとつ、頼むよアンちゃん。おっさんが巫女さんの代わりを務めたら色々なところから非難を浴びちゃうでしょ?そう思いながら、俺は香を焚き始めた。
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