第169話

 俺はなるべく迅速に、可及的に速やかにお尻の痛みを癒しながらミュエーを走らせ、やっとヘルツ王国の王都ロルマジアに帰って来た。いやー、やっと着いたよ。


 出発する前に、エルフの秘薬を得るために対価を要求されたら一度戻ってきます、的な事を宰相閣下とお話しした気がする。それが連絡も何もせずに、エルフの里へダイレクトインだったからね。きっとやきもきして待っているに違いない。最悪死んだと思われているかも知れない。とにかく早く報告に行かないと。


「大分時間が掛かっちゃったから、依頼を放棄してそのまま逃げたと思われているかもよ。」

「もう少し信用して頂いていると思いたいね、俺は。」


 いやでも、そう言う可能性もあるか。俺はこの国に仕えている訳でもないしね。そうだよ、俺は冒険者なんだから。こんなエルフの秘薬を探し求めるなんて重要任務押し付けないで欲しいよな。まあ、その分のお金は貰うけどさ。


 宿を取った俺たちは、先ずは冒険者組合に行く事にした。組合長のドナルドに面会を申し入れるためだ。今回の件も、一応組合を通しての依頼となっているんだ。受付のお姉さんに用件を伝えて、待つ事暫し。俺たちは組合長の部屋へ通された。


「久しぶりだなジロー、アンナ。」

「組合長もお変わりなく。」

「王都じゃぁ、何が起こる事も無いさ。毎日書類仕事ばっかりさ。」

「それもそうですね。王都で冒険者が活躍する様な状況になったら、それはそれで大問題ですからね。」


 俺は出されたお茶を一口飲んで喉を潤した。アンちゃんは・・・、もうさすがに諦めたらしい。大人しくお茶飲んでいる。


「さて本題だが、あれだろ?また王城へ取り次いで欲しいって事だよな。」

「ええ。毎度お手間をお掛けして申し訳ありません。」

「気にするな。これも組合が請け負った仕事だからな。で、エルフの秘薬は手に入ったのか?」

「運よく手に入れる事が出来ましたよ。」


 俺はドナルド組合長に事のあらましを話して聞かせた。ただし、ヒュドラの事はぼやかしておいた。大蛇ですよ。大蛇が出て困っているところを手助けしたんですよ、ってね。


 大蛇ごときに後れを取るエルフではない、とドナルドは思っている様だが、問い詰められる様な事はなかった。俺がこれ以上聞いてくれるなって顔をしたので、空気を読んでくれたのだろう。流石空気の読める男、ドナルド組合長。偉くなる人はやっぱり違うね。


 それから数日して、王城へ来る様にとの連絡が来た。今回はギルバート殿下絡みの依頼だったけど、生徒の皆さんは留守中ちゃんと練習していたかな?エマ姫また何かやらかしてないだろうな。爺はちょっと心配ですぞ。

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