第165話
無事エルフの秘薬を手に入れた俺たちは、首を長くして待っているであろうヘルツ王国へ帰る事にした。
「きっとですよ。きっとまたいらして下さいね。ジロー様。私は何時までもお待ちしております。」
そう言ってナタリーから呼子を手渡された。これを迷いの森で吹けば、迎えのエルフが来てくれるらしい。何時までも待っていると言うのも嘘ではないだろう。俺の寿命なんてあっという間だ。それ程エルフの寿命は長い。
「こっちへ来る事が有ったら寄らしてもらうよ。じゃあ、元気でな。」
ナタリーとの別れを済ませると、モモットルへ向かう。
「私に付いて来て下さいね。」
「帰りはゆっくりで頼むよ。」
案内はセシルがしてくれる事になった。だって原生林の中を帰れって言われても、迷いの森じゃなくたって迷っちゃうって。そして、帰りは急ぐ必要が無いんだから、筋肉痛にならないくらいの歩みでお願いしたい。
「帰りは私が手を引いて行ってあげる。」
アンちゃんが手を握って来た。女の子に手を引かれて森を進むおっさん。それは何とも情けない光景だが、アンちゃんなりのスキンシップなんだろう。情けないおっさんは時に手を引かれ、時に背中を押されて森を進んだ。
途中からセシルと俺たち以外にも10人くらいのエルフが合流した。どうせ街へ行くのだから、鉄製品の修理、買い出しをするとの事。即席のキャラバンモドキだ。ヒュドラとも戦ったし、さぞや武器も痛んだろうね。臍の里以外の里からも集まって来ている。街へ行くのは十年振りくらいとの事だそうだ。
「では私たちはここで失礼します。道中お気を付けて。」
「ありがとう。こっちへ来たらこの呼子で知らせるよ。」
「その時はまた私がお迎えに参りましょう。」
そう言って俺たちはセシルと別れた。セシルは他のエルフ達と一緒に行く様だ。偶には森の外に出るのもいい事だと思うよ。引き籠りエルフなんて陰口叩かれてるんだから。年に何回かくらいは定期的に交易すれば良いのに。十年も経ってたら物価だって変わるだろうに。どうしてるんだろう?
「鍛冶仕事の対価はどうやって支払うのかな?」
「私も疑問に思ってセシルに訊いてみたの。やっぱり森の恵みで支払うみたいよ。」
森には薬草だけではなく、キノコや香木など迷いの森でしか採れない様なものが多くあるらしい。エルフ達は暇つぶしにそれらを採取して天日干ししておき、こういう時の物々交換に使うとか。
「この森でしか採れないものなら、価値は上がっても値下がりする事はなさそうだね。」
俺たちはエルフ達への余計な心配をしながら、ミュエーを預けていた宿屋へ戻って来た。
「大将、長い事留守にしてゴメン。いま戻ったよ。」
「アンタたち、無事で、生きて戻って来たのか。」
なんだかんだで1か月ちょい留守にしてたからね。そりゃ大将も驚くか。
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