第164話

 本命、アンちゃん。ナタリーはキープ。それだけ聞くとハーレム作って魔法をバンバンぶちかまし、俺Tueeeeしている様に聞こえる。まあ、魔法はそこそこ使えるから良いとしても、全然そんなんじゃないからね。俺はジゴロでもナンパ野郎でもないから。至って小心者のおっさんのお話しですよ。


「何一人でぶつくさ言ってるのよ。早くしないと始まっちゃうわよ。」


 アンちゃんに急かされて祭壇へとやって来た。今日はエルフ族の厳粛な儀式、聖なる果物を授与する日なのだ。前回はヒュドラが乱入してきて、儀式は中断になっていた。ヒュドラも居なくなった排除したし、本日再度行われる事になったと言う訳だ。


 俺たちが聖なる果物エルフの秘薬を求めてやって来た事は、事前にオーギュストやナタリーに伝えた。


「ジロー殿はヒュドラを退治された、正しくエルフ族の英雄だ。ジロー殿が必要とあらば、どうぞお持ち下さい。」


 とオーギュストが許可をくれたので、頂いて帰る事が出来る。なんたって無料ただで貰えるんだぜ。最初はお金払うとか、物々交換とか、最悪盗んで逃げるとか考えてたのに。そう考えると、あいつ害虫も役に立った訳だ。


 巫女が果物を籠に入れて運んで来た。見た目は桃とリンゴっぽい。今年火の元素を授かった子供は全部で6人。果物は各10個。余った4個ずつの桃とリンゴは俺が貰って良い事になっている。

確かギルバート殿下は3属性持ちだったから、4個ずつあれば間に合うな。殿下は父兄とちゃんと相談しているだろうか?


 子供たちは火属性を消し、新たな属性を身につけた様だ。一番人気はやはり風で4人。後の2人は水属性を選んだ。人気のない土属性。やっぱり原始林の中では使い難いのかな。こうして儀式は無事に終わった。


「お疲れ様、ナタリー。」

「ありがとうございます。ジロー様。これが残りの果物です。」

「やあ、ありがとう。これで依頼達成だよ。ところでこの果物、効果はいつまで続くの?」


 メレカオンに帰る途中で効果切れになったら大変だ。


「詳しくは存じませんが、1年は大丈夫かと。昔、その年に生った果物だけでは足りず前の年から保存しておいたものを使った、と言う記録が残っております。」

「さっきの子たちは皮も丸ごと食べてたけど。」

「はい。丸ごと食すのが昔からの習わしです。」

「切って食べても大丈夫かな?」

「さあ。昔から丸齧りで、切った事が有りませんので、分かりません。」


 うーん、王族的には丸齧りって絵面としてどうなんだろう?まあ、極一部の人達でこっそり食べれば大丈夫かな。俺はナタリーから籠を受け取ると、空間収納酒蔵に仕舞った。


 因みに聖なる果物は種無しだそうな。種から育って、そこら中に生えても困るしね。誰だ、いまお前の事かなんて言ったヤツは。俺は種無しじゃないぞ。いや、試した事無いから分からないけどさ。どうか俺には種があります様に。

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