第160話

 今俺は女神様にお願いしている真っ最中だ。早くヒュドラを消し去って下さい、コーラス様。


*****


(こーちゃん、この前約束したじゃない。ちゃんと後始末してあげなさいよ。)

 いらっしゃったのですね、アリア様。お口添えありがとうございます。


(たかが害虫ヒュドラって言ったって、仮にも神界に湧く虫なのよ。ジローさんが死んでしまったらどうするの。ねえ、こーちゃん。)

(だからちゃんと掃除するって。)

(だめよ。こーちゃん大雑把なんだから。私も一緒にお掃除してあげるわよ。)

(一人で大丈夫だよお。そうだ、それよりあっちゃん。向こうは留守にしていて大丈夫なのか?)

(大丈夫よ。私いつもキレイに片づけてるもの。向こうの世界だって直ぐに滅亡する様な事は起こらない様にしているわ。)

(あたしの世界だって、直ぐに滅びる様な事になってないって。)

(どうだか。またこんな事が有ったら大変じゃない。また害虫が下界に落ちたら、大陸の一つぐらいすぐに滅んじゃうわよ・・・。そうだ、良い事を思い付いたわ。私が居ればジローさんの回復魔法の力も底上げされるから、いつもここに居ればいいのよ。)

(だ、駄目だって。あっちゃん。今だって大神の目を盗んでコソコソやってるんだから。)

(あら、お友達、それも幼馴染のお手伝いをする事がそんなに駄目な事なのかしら。)

(分かった、直ぐに掃除するから。そしたら一回向こうへ戻ってくれよ。ね、あっちゃん。)


 そう言うとコーラス様は右手を差し出された。するとヒュドラの亡骸が光に包まれて消滅した。それだけじゃない。毒沼と化した池も元の澄んだ水を湛えている。辺りに飛び散ったヒュドラの血も奇麗に浄化されていた。


(これで良しっと。これで文句はないよな、あっちゃん?)

(うふふ。そうね。そうだ、ジローさん。この後害虫の死骸があった辺りを良く調べておいてね。が残っているとこまるでしょう?)

 承知いたしました。コーラス様、アリア様。この度は大変お手数をお掛け致しました。感謝致します。


*****


「見ろ!ヒュドラの死骸が光っているぞ!」


 突如異変が起こったヒュドラの死骸。監視していたエルフ達に緊張が走った。もしかして死から復活するのではないか・・・。


「いや、よく見て見ろ。段々と姿が薄くなって・・・。あ、消えた。消えて無くなったぞ。」

「おーい、毒沼になっていた池も元通りになっているぞー。」

「・・・奇跡だ。」


 その日、女神様に祈りを捧げる式典に参加出来なかったエルフ達は、代わりにヒュドラの死骸が消滅すると言う奇跡に立ち会う事になった。いくら長命のエルフと言えど、奇跡を目の当たりにする者など殆ど居ない。後日警備にあたっていたエルフ達は、その目で見た奇跡の話を何回もせがまれるのであった。

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