第156話

 夜、木桶の使い道を聞かれたので、アンちゃんにヤマタノオロチの話俺の故郷の神話をして聞かせた。なぜヤマタノオロチは頭が8個なのか。名前と数が合ってなくない?それは永遠の謎だ。俺に訊かれても分からない。学校の先生にでも聞いてくれ。


 とにかく酒は飲むらしい。ヤマタノオロチもヒュドラも親戚みたいな見てくれだから、きっとヒュドラも飲むに違いない。ぜひ飲んで欲しい。飲んでくれないかな。飲んで、お願い。まあ、飲まなかったら沼を干上がらせるとか、別の手も考えてるけどね。


 エルフにも桶職人が居るのだろう。立派な桶が完成した。まるで日本酒を仕込む時に使う様な大きな桶だ。これならヒュドラも頭を突っ込めるだろう。先ずは木桶、準備ヨシ!


 良い仕事をしてくれた職人エルフ達に一杯おごる事にした。最初は遠慮していたけど、最後は結構盛り上がった。エルフも結構お酒好きなんだね。なんて思ってたら翌日二日酔いで気持ち悪そうにしているのを見て、何か悪い事をした気になった。そう、キミたちはドワーフじゃ無かったね。ゴメン、気づかなくて。


 作戦決行は明日と決まった。俺はヒュドラが出てきたらエルフ達に近づかない様、オーギュストに頼んだ。また血を浴びたら面倒だからね。せいぜい遠間から矢を射掛ける程度にする。勿論、接近戦メインのアンちゃんも同様だ。アンちゃんを庇いながら戦うおっさん。カッコイイ響きだけど、実際は面倒だからやっぱりお留守番決定。駄々こねても連れて行かないからね、アンちゃん。


 そしてその晩、また夢に女神様がお立ちになられた。


(ジローさん。害虫駆除ヒュドラ退治を押し付けられたって本当ですか?)

 そのお声はアリア様でしょうか。お久しうございます。


(ねえ、本当なのですか?)

 はい。コーラス様からご依頼を承っております。


(まあ、なんて事でしょう。いくらジローさんに与えた回復魔法であっても、血を浴び過ぎれば死んでしまいますよ。ちょっと、こーちゃん。これはどう言う事なの?)

(だからさっきから謝ってるじゃねぇか。)

(こーちゃんがだらしないから虫が湧くのよ。私が後でお掃除してあげるから。)

(いやあたしのせいじゃ無いって。あいつヒュドラは外から入って来たんだって・・・。)

 恐れながら、一応ヒュドラが血を流さない様に仕留める心算でございます。


(何か考えがあるのね。分かったわ。でも十分気を付けるのですよ、ジローさん。)

 ありがとうございます、アリア様。ところでコーラス様に一つお願いがございます。仕留めた後のヒュドラの処理をお願い出来ないでしょうか。毒性が強すぎて、私どもでは対処が難しいと思われます。


(そのくらいやってあげなさいよ、こーちゃん。)

(分かった、分かったよ。害虫駆除ヒュドラ退治が終わったらエルフの巫女と祈りを捧げな。そしたらあたしが処分してやるから。)


 コーラス様のご助力が得られた事で、ヒュドラ退治の目途が立った。

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