第149話
最初里長の家かと思って連れて来られた大きな建物は、病院の様なものらしかった。
「ついて来てくれ、ジロー殿。」
俺はオーギュストに請われるまま奥へと進んだ。途中の部屋をチラ見すると、火傷の様な傷を負ったエルフ達が横になっていた。火を嫌うエルフなのに、火事でもあったのだろうか?
最奥の部屋へ来ると、オーギュストは一声かけてドアを開けた。そして俺たちを招き入れる。
「さあジロー殿、中へ入ってくれ。」
「失礼します。」
挨拶して中に入ると、中には女性と思しきエルフが寝かされていた。思しきと言うのは、その人が包帯でぐるぐる巻きになっているからだ。それはもうミイラの如く。しかしその包帯には血が滲んでおり、部屋中に薬草の匂いが充満していた。
「こちらで臥せっているのはナタリー。エルフ族の巫女だ。」
「かなり重症の様だが、火傷でもしたのか?来る途中にも火傷を負った様な患者が居たみたいだが。」
「これは火傷では無いんだ。」
オーギュストは苦々しい顔をして説明してくれた。
「これはヒュドラの毒によるものだ。1週間ほど前、我らはエルフの聖地のひとつで神事を執り行っていた。その時突如としてヒュドラが現れたのだ。ヒュドラは手負いだった。おそらくグレイ都市同盟の方から追われてこの森へ逃げ込んで来たのだろう。」
グレイ都市同盟とは俺たちが来たファラド王国から森をはさんで反対側にある都市国家群だ。迷いの森の結界もヒュドラ相手には効かなかったのか。
「決して警戒を疎かにしていた訳では無いが、神事の最中という事もあり我々は後手に回ってしまった。ヒュドラが既に手負いであった事もあり、多くの者がその血を浴びてしまった。特に巫女のナタリーはほぼ全身に血を浴びる事となった。」
ヒュドラの毒が相手では、いくら薬効が高い薬草でも荷が勝ちすぎる。せいぜい痛み止め程度にしかならない。そして体力が消耗して行き、最後には死に至る訳だ。彼らが
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