第142話
迷いの森。それはここファラド王国に隣接している大きな森だ。ここにエルフ達がいくつかの部族に分かれて暮らしているらしい。迷いの森に足を踏み入れた者は、森の中心部を目指していても道に迷った挙句、結局森の外へ出てしまうと言う。
ごく稀に森の中に入ったまま帰って来ない人もいるらしい。何処かの山の麓に広がる樹海みたいなところだ。個人的にはあまり積極的には行きたくない場所だな。
昔、土地を広げたい国がどこかの皇女殿下みたいに『焼き払え』と言って攻め入ったらしいが、エルフの反撃にあって壊滅状態になった。その殆どは矢によって射殺されたらしい。何かこの辺りもテンプレっぽい話だな。
そんな森だからか、現在は何処の国の領土にもなっていない。こちらから手を出さなければ、エルフから攻めて来た試しはない。専守防衛が徹底している。各国のお貴族様方も手を出すだけ損、お金にならない土地との見方で一致した様で、現在に至る訳だ。
「今日聞いた話をまとめると、ざっとこんなもんかな。」
俺たちはファラド王国タンカレー侯爵領の領都、モモットルへと来ている。そこで情報収集をしているところだ。
「アンちゃんの方はどうだった?」
「組合事務所に行って聞いてみたけど、エルフって良くて1年に1度来るかどうかってところみたい。ここ最近は来てないらしいわ。」
今日、俺とアンちゃんは二手に分かれて調査を進めていた。アンちゃんには組合事務所に行って、依頼を見たりお姉さんからお話を聞いたりしてもらった。組合事務所なら外国から来た俺たちにも比較的優しくしてくれるからね。変な奴に絡まれる事も無いだろうし、ぼったくられる事も無い。安心して任せられる場所だ。
「こっちから交易に行く事はあるのかな?」
「無いみたいよ。だって、森の奥に入れないし。向こうから一方的に来るだけ見たい。」
エルフ達は森の中で自給自足の生活を営んでいる。だけど、どうしても足りないものって出て来るよね。エルフにとっては鍛冶仕事なんかがそうだ。エルフだって金属のナイフや道具も使う。なるべく火を使いたくないエルフにとって、鍛冶仕事ほど向かない仕事は無いと言う訳だ。だから
「ここでエルフの人たちがいつ来るのか待ってたら、埒が明かないわね。どうする、ジロー?」
「そうだなぁ。明日一度森の周辺まで行って見ようか。実際に見ないと分からない事もあるかもだし。」
「あんまり奥に入って帰って来れなくなるのは嫌よ。」
「そんなに奥にまで入るつもりは無いから大丈夫だよ。それにほとんどの場合は、勝手に森の外へ出ちゃうらしいし。」
そう言う事で、俺たちは明日森へ下見に行く事にした。
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