第138話

 昨夜の夢でコーラス様から重要な事を教えて頂いた。それはアンちゃんに加護は与えられていないという事だ。恐るべし、女の感。え?もっと重要な事が有るだろうって?俺にとってはアンちゃんとの関係の方が重要ですよ。


 とはいえ、エルフの秘薬についても色々教えて頂いた。ありがとうございます、コーラス様。でもこの情報、誰にも言えないよなあ。出所は何処だと聞かれてハイ女神様に教えて頂きましたなんて言った日には、王城に幽閉ご招待されるか神殿で幽閉ご接待されるか。何れにしても碌な事にはならないな。黙っとこ。


 最終的にはエルフの里に行かなきゃならない事には変わりない。俺とアンちゃんは旅支度を始めた。因みに今回は他国での情報収集なので任地の変更はありません。王家からの特別依頼と言う事で、ロルマジアからの出張になります。出張手当付けてくれるかな?付けてくれたらお土産にお饅頭でも買ってきてあげよう。


「では行って参ります。先ずはファラド王国の王都キケアタンを目指すつもりです。」

「今回は秘薬の情報収集が目的だ。危険は無いと思うが気を付けて行くがよい。」


 陛下と宰相閣下に出発の挨拶をした。そうしたら旅費と当面の活動費として纏まった額のお金を貰えた。ラッキー。お饅頭期待しといてください。この世界に来て、お饅頭を一度も見聞きした事無いですけど。


*****


「往きは船なのね。私も船旅は初めてだから楽しみだわ。」

「あれ?仕事で行くから遊びじゃないって言ったのは誰だっけ?」

「それは、その・・・。もうジローのバカ。意地悪。」


 こういうやり取りって良いよなぁ。密かに憧れてたんだよ、俺。という事で、俺たちはファラド王国へ向かうために船に乗っている訳だ。はて、俺が最後に船に乗ったのは何時だっだろう?確か会社の宴会で、張り切った幹事が屋形船を貸し切りにした時かな?おっさんもアンちゃんに威張れる程、乗船経験はありませんでした。


 ヘルツ王国は内陸国なので海には面していない。その代わり、大きな川が何本か流れていて、重要な交通手段となっている。そのうちの1本がファラド王国方向へ流れているので、船に便乗させてもらっている。勿論ミュエーも一緒だ。船を降りてからは君たちに頑張って走ってもらうからね。よしよし。


 国境近くの船着き場で下船し、ここからはミュエーに乗って一路キケアタンを目指す。国境では冒険者のタグを見せると、あとは簡単な手続きでファラド王国へ入国できた。今までの冒険者の皆さんの実績あっての事です。有難い事です。でも入国する時にお金税金は取られました。必要経費だから諦めよう。


 さて、始めて来たファラド王国だ。色々と楽しみだな。勿論仕事はしますよ。ええ勿論ですとも。でもアンちゃんと二人で観光旅行で来たかったな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る