第137話

(エルフの秘薬?なんだそれは?)

 迷いの森に住むエルフが持つ、魔法を強化できる秘薬との事です。お心当たりはありませんか。


(エルフ?魔法?・・・ああ、あの事か。エルフの秘薬なんて言うから分からなかったぜ。)

 いったいどの様なものなのでしょうか。


(秘薬なんてものじゃないよ。あれは果物だ。)

 果物、でございますか。


(まあ、普通の果物とはちょっと違うがな。果物がる木にあたしの神威を少し与えたのさ。)

 魔法を強化する力が有るのですね。


(そこもちょっと違うんだよなあ。先ず、果物は2種類ある。)

 2種類でございますね。


(効果の前に、なんでエルフがそんなものを持っているかを説明した方が早いな。あいつらは森に住んでいるだろう。だから火を嫌うんだ。森が火事になったら大変だからな。だけど、生まれて来る子供の中には、火の元素に適性を持った者もいる。)

 魔法の適性はコーラス様がお与えになっているのではないのですか?


(いちいち一人ずつ見てられっかよ。あんなのくじ引き見たいなもんだ。)

 はあ。


(すごく熱心に祈りを捧げるもんだから、あたしも無視できなくなって果物を与える事にしたのさ。一つ目の果物の効果はある元素の適性を消すってものだ。エルフ達はこれで火に適性がある子供の適性を消している。)

 エルフは火が使えずに不便では無いのでしょうか。


(火の起こし方なんて、魔法以外にも幾らでも有るからな。あいつらだって生肉喰ってる訳じゃないさ。種族的に魔法との親和性が高いから、間違って使ったらお前が使うのと同じぐらいの威力が出ちまうのさ。)

 一つ目の果物は、特定の元素の適性を消す効果があると。二つ目の果物はどの様な効果があるのでしょうか。


(生まれた子供が持つ元素への適性の数もくじ引きだな。大抵は一つか良くて二つ。稀に三つ。極僅かに4元素全てに適性を持つものが居るってところだ。)

 ヘルツ王国の殿下方はお三人とも3元素に適性がありますが。


(あれはアリアの仕業だな。)

(私のせいにしないでよ、こーちゃん。勇者の血筋なんだから、魔法に適性があるのは当然でしょ。)

(わかったよ。話を戻すと、火の元素への適性しか持たなかった子供から火を消してしまうと何も残らなくなってしまうだろ。だから、もう一つの果物は新たな元素への適性を付与するための

物なのさ)

 成る程。こうしてお話をお伺いした限りでは、魔法を強化すると言うのは誤って世間に流布された噂の様でございますね。


(そうとも言えないのさ。まあ、ちょっとした裏技みたいなものだ。2元素や3元素に適性を持つ奴から適性を消すと、残った元素の適性に吸収されてその元素の適性が上乗せされるんだ。適性が上がれば魔法も強力になる。これが魔法が強化されると言うように伝わったんだろうな。)


 中々に面倒くさい話ではあるが、簡単に言えば分散している力を一つに集約すればその分強くなる、と言う考えで良さそうだ。

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