第135話

 と言う訳でやって来ました組合事務所。ドナルド組合長からお話を聞く事情聴取するためだ。


「組合長、お久しぶりです。」

「おおよく来たな。まあ掛けてくれ。」


 俺たちは組合長と向かい合う形で腰を下ろした。するとお姉さんが、またサッとお茶を出してくれる。だからアンちゃん、物欲しそうな顔をしないの。


「今日はドナルド組合長にお尋ねしたい事が有って来ました。」

「珍しい事もあるもんだな。何の話を聞きたいんだ?」

「以前宰相閣下とお話されたエルフの秘薬についてです。」


 俺は特定の個人名を出さない様に気を配りながら、搔い摘まんで事情を説明した。まさか組合長がうわさ話のネタにするとは思わないが、余計な事は話さない方が無難だ。正に沈黙は金。


「私もファラド王国から来た冒険者から、うわさ話を聞いた程度だ。宰相閣下が仰った内容以上の事は生憎知らんのだ。」

「その冒険者はまだこの国に居るのですか?」

「いや。元々商隊の護衛で来たのでもう帰ったよ。」

「それは困りましたね・・・。」

「それじゃあ、私たちがファラド王国に行って情報を集めて来るのはどうかしら。」


 アンちゃんが言うように、現地に行って聞き込みするしかないかなあ。また宰相閣下とご相談しないと。


 冒険者は国を跨いで活動する事も少なくない。さっきの護衛依頼などが代表的だ。ただ、各国に冒険者組合が有るのだが、これはその国の中だけの組織となっている。こっちの世界には国連みたいな組織は無いからね。


 ただし、国ごとにバラバラだと面倒なので、例えばヘルツ王国で登録した冒険者プレートは隣のファラド王国に行っても通用する事になっている。これは国同士の決め事ではなく、あくまで冒険者組合同士が決めた慣習だ。一応身元は保証される事になっている。


 だから冒険者は何処にでも行ける訳なのだけど、ちょっと注意する事が有る。保証するのは身元だけなので、ランクは大体1ランク下げて見られる。俺たちで言えば、別の国に行ったらCランクという事になる。また、その国の法律に従わなければならない。普通に税金を取られたりする国もある。


「俺もファラド王国に行って見るのが良いと思うな。」


 仕事で出張とは言え、少しくらい観光したって罰は当たらないだろうし。当たりませんよね、コーラス様?何たって前世でボッチだった俺は、海外旅行はおろか国内旅行だって殆ど行った事が無いんだ。


「いい、ジロー。これはお仕事なんだからね。遊びに行くんじゃないんだから。」


 またしてもアンちゃんに心を読まれてしまった。まさかとは思いますが、アンちゃんにおかしな加護をお与えになってませんよね。コーラス様?

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