第134話

 またしても緊急保護者会のお知らせ。そうは言っても何かとお忙しい国王陛下と宰相閣下。ギルバート殿下からのご相談当日とはならず、7の日の4の鐘の後、つまりエマ殿下の授業が終わってからと言う事になった。


「ギルバートがそこまで思い詰めているとは・・・。」

「陛下も殿下方の前で期待をかけるお言葉が過ぎたのではないですか。」


 そんなこと言ったって仕方ないじゃん。イヤ、それが重しになっているのでしょ。と、陛下と宰相閣下の間でどうするこうする話し合いが続いている。後継者を育成するのは、どこの世界でも大変だ。それが国のトップともなれば猶更だ。


「そう言えば、真偽の程は定かではありませんが、魔法を強化する秘薬があると聞いた事がありますな。」

「それは本当か?どこからの情報だ?」

「冒険者組合長のドナルドからその様な話を聞いた覚えがあります。」


 そんな秘薬があるんだ。アリア様の常識辞典には出て来ない情報だ。今度女神様にお会いした時にお尋ねしてみよう。『教えて、女神様!』・・・良い歳したおっさんが言う言葉じゃないな。俺も自己嫌悪に陥るわ。


「うわさ程度の話ですが、我が国の隣国ファラド王国のさらに先にある迷いの森にエルフ達が住んでおり、彼らが持つ秘薬だそうです。ファラド王国の冒険者が偶然エルフの里に迷い込み、そこで得た情報だとか。」


 国王陛下が考え込んでいる。あまりに曖昧な情報だから慎重になるのは当然か。エルフだって秘薬を何の見返りもなく呉れるとも思えないしね。


 暫く考え込んだ陛下は俺にお尋ねになられた。


「ジローよ。お前の目からみてギルバートはどう思う?」

「殿下にもお伝えしましたが、少しずつではありますが上達の兆しが見られます。殿下はまだ5歳。このまま続ければ或いは・・・。」

「お前ほどの腕前になるか?」


 何ともお答えし難いご質問。まさか女神様に頂いた特典ボーナスですとは言えないし。ここは殿下との歳の差で誤魔化すしかないな。


「私なぞ、この歳まで魔法ばかり練習してやっとこの程度でございます。剣術もその他の事もからきし駄目でございます。」


 国王陛下は苦い顔をされた。ギルバート殿下だって、これから成長されるにつれて学ばねばならない事が増えて行くはず。魔法ばっかり練習してられないもんね。と、ギルバート殿下の話なのに急にエマ姫様のお顔が浮かんだ。姫様大丈夫ですよね。本当に爺は知りませんよ・・・。


「ジローよ。すまぬがエルフの秘薬について調べてみてくれぬか。」

「承知つかまつりました。先ずはドナルド組合長から詳しく話を聞いてみようと思います。」

「うむ。頼んだぞ。」


 可愛い教え子のためだから、先生頑張ってみるよ。

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