第125話

「それともう一つ。」

「何でございましょうか?」


 陛下、もうそろそろ勘弁して頂きたいのですが。


「新たに女神アリア様の聖遺物が出来たのは喜ばしい事だ。しかしだ。それがテスラ王国と言うのが良くない。アリア様が勇者初代を導いた事は皆が知るところだ。我が国ヘルツ王国にもアリア様の聖遺物を作る事は出来ぬか?」


 なんて清々しい無茶振りでしょう。出来る訳ないじゃん、そんな事。


「そう言われましても、人の身であるこの私には奇跡を起こす力はございません。」

「陛下、こればかりは如何ともし難いでしょう。それよりもエマ殿下は魔法の才に恵まれているご様子。ジローも優れた魔法使いですので、これを学べば或いは回復魔法も使える様になるやもしれません。」


 宰相閣下、たびたびのフォローありがとうございます。陛下はアリア様と勇者の事で頭に血が上り過ぎ。もっと冷静になって頂きたい。これで結構宰相閣下も苦労人なのかも知れないな。


その後2,3質疑応答があって、本日の謁見は終了となった。って言うか、タリスカー伯爵から書状が届いてるなら俺たち要らなくね?


*****


 国王陛下との謁見が終わって帰れる程甘くはない。本日に限ってはアンちゃんが騎士団へ行く事も叶わず、二人そろって宰相閣下の執務室にインターセプトされた。


「先ほどはご苦労であったな。陛下の無理難題にも困ったものだ。」


 宰相閣下からねぎらいの言葉を頂いた。言外に『儂も苦労しておるんだ』と仰っている様だ。お互い苦労しますなぁ。


「ところで、お前達結婚したそうではないか。タリスカー伯爵のふみに書いてあったぞ。」


 なんでそんな重要文書に俺たちの私的な事が書いてある訳け?もっと他に報告すべき重要な事が有るでしょうよ。アンちゃんは赤くなってるし。


「恐れながら、結婚ではなくまだ婚約しただけでございます。」

「結婚も婚約もそう変わりはあるまい。上手い事仕留めたな、ジロー。」


 仕留めるも何も、まだ手しか握った事が無い魔法使いですよ。そこでにやけるのは止めて頂けないでしょうか。うちの嫁、じゃなくて許嫁が困ってます。セクハラ禁止。


「前置きはこの位にして、本題に入ろうか。」


 俺たちをいじって遊んでたのかよ。この人もストレス抱えてるんだな。そう言う事なら勘弁してやろう。などと偉そうな事を考えていると宰相閣下から命令が下った。


「ジロー及びアンナの任地は再びロルマジアに戻す。それと、殿下方への魔法指導も再開する。日にちは前と同じで良いな?」

「はい。2の日、5の日、7の日で宜しいでしょうか。」

「うむ。実はな、先ほども話したと思うがエマ殿下の魔法の才能が優れているのは事実なのだ。それに姫様自身もご興味をお持ちの様で、ジローに教わる事を心待ちにしているご様子なのだ。」


 魔法大好きっ娘は俺の事を待っていてくれた様だ。俺は正直に言って嬉しく思うが、回復魔法は教えてあげる事が出来ないんだよなぁ。ごめんねエマ姫様。

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