第124話

 それから更に数日後。組合から連絡が来た。明朝王城へ登城する様にとの事だ。随分と久しぶりの気がする。


 城門の衛兵に書状を見せると、また待合室に案内された。またまた案内の人について行くと、今日は謁見の間に通された。え、宰相閣下の執務室じゃないの?宰相閣下にご報告するだけと思っていたら、国王陛下とご一緒とは油断した。


「国王陛下の御なりである。」


 衛士が陛下の入室を告げる。俺とアンちゃんは片膝をついて頭を下げ、臣下の礼をとった。俺的にはこのポーズ好きなんだよね。カッコ良くない?少なくとも土下座よりは100倍カッコイイと思うのは、俺の中二心のせいだろうか。


「冒険者ジロー、並びにアンナ参上致しました。」

「うむ。面を上げよ。」


 こうしてまた、国王陛下並びにお偉いさん方との面談が始まった。気を遣うから好きじゃないんだよね、俺。とは言いつつも、テスラ王国トマヒヒンでの一件を説明する。


「では手紙に書かれていた事はまことなのだな。」

「手紙、でございますか?」

「タリスカー伯爵の所へ竜騎兵を送って、持ち帰らせたのじゃ。」


 ドワーフが使ってた伝書鳩。その鳩さんが運んで来たのかと思いきや、竜騎兵のご登場ですよ。ちょっと大がかり過ぎませんか、陛下。まあ内容が奇跡に関する事だから大げさでも無いのかな。


「全ては戦争を起こさない事を願われた、女神アリア様が成された事です。」

「お前たちは、その奇跡が起こった時に立ち会ったと言うのは本当か?」

「真にございます。」

「書状ではジロー、お前が回復魔法を使ったと書いてあるが。」


 さすが勇者の血筋の国王陛下。そこに喰い付いて来るか。勇者初代以外使える人居ないらしいからね。どこの馬の骨とも分からん冒険者風情がそんなもん回復魔法をポンポンやってたら、王族のメンツ丸つぶれだよね。


「傍から見ればその様に目に映ったかも知れません。しかしながら、私は単なる依り代にすぎません。私を通してアリア様が奇跡を起こされたのです。」

「では、お前自身は回復魔法は使えないのか。」


 ちょっと残念そうな国王陛下。王族に回復魔法が使える人材をそんなに欲しいのかな。


「もしお前が回復魔法を使えたなら、エマと娶せようかとも考えたのだが・・・。」


 ちょ、ちょっと待って下さいよ、陛下。変な事考えないで。エマ姫、御年3歳ですよ。現時点で歳の差約11.7倍ですよ。ほら、アンちゃんの肩が震えているじゃないですか。


「陛下。エマ殿下はまだ御年3歳。ジローとの結婚は現実的ではありません。」


 宰相閣下ナイス。大体、エマ姫が15歳になった時、俺47歳だよ。もう犯罪者と言っても過言ではないな。姫様だってそんなおっさん嫌だろう。


 そう言えばこの世界の平均寿命って何歳くらいなんだろう。俺は急に気になった。アンちゃんと結婚してすぐ寿命なんてあんまりだもんね。

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