第123話
メレカオンを発ってから5日後、漸く俺たちは
「一人部屋は開いているか?」
「生憎一人部屋はいっぱいでね。ダブルなら1部屋空いているよ。」
「じゃあ、その部屋でいいわ。」
アンちゃん即答である。いくら婚約したからって言っても一つのベッドで寝るのはちょっと・・・。おっさん、これでも陰でコソコソと苦労しているんだよ。
「一人部屋を二部屋よりダブルの部屋の方が安いし。それに私たち婚約しているのだから何も問題ないでしょ。」
真正面から正論をぶつけられると、何も反論できない。これでここ当面の間、悶々とした生活が決定してしまった俺である。と言う訳で、悶々としながらお休みなさい。
明けて翌日。俺たちは組合事務所に行き、組合長に面会したい旨を受付のお姉さんに伝えた。そう言えば始めてロルマジアに来た時はビーム辺境伯と一緒だったし、事務所に来たのってBランクのプレートを貰いに来た時くらいだ。
どんな依頼があるのか興味深々で事務所内をうろついていたら名前を呼ばれた。組合長が面会してくれるとの事。ふつう組合長、それも王都の冒険者組合の組合長って言ったら書類仕事が山の様にあるんじゃないの?
案内をしてくれるお姉さんの後を追いながら、俺はある事に思い至った。これは王宮から連絡が来ていたに違いない。俺たちがBランク冒険者になったのも、宰相閣下の差し金だ。このくらいの事やって当然だろう。
「失礼します。Bランク冒険者のジローさんとアンナさんをお連れしました。」
「入ってくれ。」
王都の組合長と面会するのは初めてだったな。ここはちゃんと挨拶しておこう。
「初めまして、組合長。私がジローでこちらがペアを組んでいるアンナです。今までご挨拶に伺えず、申し訳けありません。」
俺がお辞儀をするのに合わせて、アンちゃんもペコリと頭を下げる。
「私は組合長のドナルドだ。まあ掛けてくれ。」
応接セットのソファーを勧められて腰を下ろすと、いつの間に用意したのか、お姉さんがお茶を出してくれた。アンちゃん、お茶請けは無いみたいだから、そんなもの欲しそうな顔をしないの。
「王宮から連絡を貰っている。王宮へ取次をすれば良いのだろう?」
「面倒な仕事を増やして申し訳ありません。」
ドナルドはニヤッと笑うと、少々くだけた口調になって言った。
「いや、冒険者が国家間の戦争を未然に防ぐなんて、滅多に出来る事じゃないさ。これで
組合長から、『良くやってくれた』と礼を言われた。政治的な事は良く分らないが、それでも冒険者の地位向上に少しでも貢献できたのなら嬉しい事だ。
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