第121話

(では、証人前へ出なさい。)

 夢の中でコーラス様が裁判官になっている。え、俺ですか?アンちゃんと結婚したからでしょうか?いえ、まだ婚約だけなんですけど。


(違うは。あの子とは結婚しても問題ないって前に行っただろ。さっさと前に出ろ、証人ジロー。)

 は、はい。何の御用でしょうか。コーラス様。本日はお日柄も宜しく・・・。


(下らない話はどうでもいい。お前に聞きたい事がある。)

 何でございましょう?私の心はお見通しでしょうから、全て正直にお答えいたします。アンちゃんとは手を繋いだ事があるだけで、未だキスもしてません。けがの治療をする時に裸を見てしまいましたが、やましい事は何も・・・。


(だからその話じゃないって言ってんだろう。その話から離れろ。聞きたいのは別の事だ。)

 では何の件でございましょう?


(アリアの事だ。)

 アリア様の事でございますか。ついこの前もご助力頂きまして、大変感謝致しております。


(そうだ、その件だよ。その前にあたしに何かしたとか言ってなかったか?)

 たしか、コーラス様が良くお休み頂ける様にと、お飲み物にお薬を混ぜたと仰っていた様な気がします。


(それだ。道理で目が覚めたらアリアの奴に抱き枕にされてた訳だ。それに随分と長い事眠ってしまったしな。)

 その様な事があったのですね。一緒に添い寝するとは仰っておられましたが。


(アリアの奴め。今度こっちへ来たら直ぐに追い返してやる。)

 恐れながら、今回アリア様にお力添えを頂いたのも事実でございます。そのお陰を持ちまして戦争を回避する事が出来き、この世界の平和が保たれております。私はアリア様に感謝致しております。


(それはこの世界の事を思ってやった訳じゃなくて、お前の為ひいてはアリア自身の為なんだろう、ジロー。)

 ・・・。否定できない所が辛い所です。


(やっぱりか。それでお前に力を貸したと言ってたが、何をやらかしたんだ?)

 戦争を回避する為に奇跡を起こされました。


(は?悪い、もう一回言って。)

 アリア様は戦争を起こさないために奇跡を起こされたのです。


(そこんとこ、詳しく聞かせろ。)

 コーラス様がお休みになられている間に、ドワーフ自治領を巡ってヘルツ王国とテスラ王国の間で戦争が起きそうになったのです。それを阻止するために、トマヒヒンの教会で奇跡を起こされました。


(具体的には何をやらかしたんだ?)

 私がお願い申し上げて、トマヒヒンの教会の女神像に、ほんの少し、極僅かにアリア様の神威を込めて頂き、新たな聖遺物を作って頂きました。


(はぁ~。それでこの世界からお前以外にもアリアの気配神威が感じられる訳か。)

 コーラス様がお休みになられていたとは言え、出過ぎた真似を致しました。誠に申し訳ございません。


(やっちまった事は仕方が無い。以後二度とこの様な事を起こさない様に。疲れたからもう一回寝るよ。)


 コーラス様は酷くお疲れになられた様だ。女神様が二度寝する程に。アリア様、仲直りするのが楽しいと仰っておられましたが、本当に大丈夫なのでしょうか。


 人の身では如何いかんともしがたい事を思いつつ、俺は目を覚ました。

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