第80話

(ぷ。ぷうっくっくっく。あっはっはっは~。あー、しんど。)

 コーラス様が堪えきれずに笑ってらっしゃる。


(自分、にいちゃんにナンパされた気分はどうやい?)

 何か変な関西弁?使うの止めて頂けないでしょうか。


(せやな。)

 ・・・・・・。


(そう怒らんといてや。まあ、お遊びはこの位にしておいて。)

 本日はどの様なご用件でしょうか。


(使徒になったジローの様子を見に来たんだよ。ちゃんとやってる様だな。)

 はい。ヘルツ王国の王族方に魔法を教える事になりまして。そこからコーラス流の使い手を増やして行こうと思います。


(そりゃええ事や。気張ってや。)

 今日は大したお話は無かった様だ。どうやらフレッドに言い寄られた事をおちょくりに来ただけらしい。コーラス様・・・。


*****


「ゴメンね。最初から話しておけば良かったね。」


 アンちゃんは騎士団の訓練を受けている時に、それとなくフレッドの噂を聞いていた様だ。


「だってジロー見たいな人が好みだったなんて。ぷっ、あははははは。」


 アンちゃんにまで大笑いされてしまった。そりゃないよ、アンちゃん。


「また一緒に来てくれるなら、フレッドさんが非番じゃない時に声をかけるわね。」

「そうしてくれると助かる。」

 主に俺の精神の安定のために。

「じゃあ、これから一緒に行く?」

「残念だけど、今日は登城する日なんだ」

「そう言えばそうだったわね。どんな建物が出来たのか後で教えてね。」


 そう言ってアンちゃんは出掛けて行った。俺は午前中は暇なので特にする事が無い。そう言えば王都(ロルマジアと言う名前だ)に来てからあまり出かけていないな。ちょっとうろついて見ようか。


 街中をぶらついていると武器屋が目に留まった。武器は俺には無縁だと思っているけど、せめて短剣くらいは持ってた方が良いかな。と軽い気持ちで店に入った。まさかここでアイツに会うとは思わなかった。


「いらっしゃい。」


 だみ声をかけて来たのは、背が低くビア樽の様な体形をして、髭を伸ばした男だった。


「今日は何を見に来たんだい?冷やかしなら帰ってくれよな。」


 店主?は愛想の無い顔で俺を見て言った。俺は接近戦をする様な体形じゃないし、服装だって推して知るべしだ。

 しかし俺は陳列されている武器も見ずに、店主に走り寄った。


「な、なんだお前。強盗か?」

「ち、違う。失礼だが、もしかしてご主人の種族はドワーフとは言わないか?」

「なんでぇお前。俺を見てドワーフって分からねぇのか?」


 いたーーー。見つけた。この世界にも居たんだ、テンプレのドワーフ。酒好きなら一度は会ってみたい種族だよ。


「俺は冒険者をしているジローだ。今日は時間が無いから、また後日伺う事にするよ。」


 今日が家庭教師の日なのが恨めしい。と、一つ思い付いた。俺は用心のため誤魔化すためにいつも持ち歩いている大きめの袋から一個の甕を取り出した。


「これはお近づきの印だ。」


 店主は何か納得していない顔をしているが、俺は強引に甕を押し付けた。


「この良い香りは、酒か?」


 何とかして仲良くなりたい俺は、高級なブランデーをプレゼントした。

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