第78話

 さて今後の予定であるが、魔法の練習については2週間休みとなった。何故なら、魔法練習用の総石造りの建物を建てるから。

国王陛下、どんだけ魔法に入れ込んでるんですか?いや教育熱心なのか?


 だが、来週の5の日に件の森へ泉を見に行く事になった。これに際しては、騎士団が森中を探索して危険な動物や魔獣が居ないか確認し、いれば排除したそうです。余計な仕事を増やして申し訳ありません。


 そして泉見学課外授業の日、俺は王都の城門の所で殿下ご一行様をお待ちしていた。俺の隣にはミュエーが居る。久しぶりだな、元気か。俺を忘れちゃいないだろうな?なんて思いながら撫でまわしてやると、ちゃんと覚えている様である。可愛い奴め。今度美味しい餌をあげよう。


 ミュエーとじゃれ合っていると、先ず護衛の騎士が来た。その後に殿下の乗る馬車が続く。俺はミュエーに騎乗すると、一番後ろから付いて行く。だって、泉の場所知らないしね。


 程なくして森に到着した。鬱蒼とした森、という事は無くきちんと手入れされた奇麗な森である。そりゃ王家が管理している森だもんね。なお、パンピーは滅多に入る事を許されないそうな。ラッキーなのかな、俺。


「ここで下馬して、ここからは徒歩で向かう。」

「殿下、足元にお気おつけ下さい。さ、姫様は私の背に。」


 なんて声が聞こえて来た。えー、エマ姫様も来ちゃってるの?

エリック殿下だけじゃないのかい。ギルバート殿下もいるじゃん。道理で護衛の人数が半端ないと思った。いくら王都のすぐ近くと言っても王子王女が全員集合ですよ。何かあったら一大事じゃ済まないよ。


 最初はエリック殿下おひとりの予定だったのだが、エマ王女にバレて、私も行くと言って泣き叫んで転げまわったらしい。3歳児だから仕方ないとは言え、一国の王女様ですよ。あなた様は。


 陛下も末っ子でしかも一人娘に、お父様なんて嫌い!なんて言われたら即降参したとの事。ギルバート殿下も便乗して、晴れてお三方揃い踏みです。その代わり護衛の騎士大増員。王城から出て街中を通る際には、住民は何事かと思ったらしい。


 俺は城門で待っていたからその辺りの事は良く知らないんだけど。後でアンちゃんに様子を聞いておこうかな。うっかり課外授業も出来ないね。


*****


「これが泉です。」


 エリック殿下にご説明する。まさか泉を見た事が無い人が居るとは思わなかったな。前世でも俺の住んでいた辺りは田舎だったから知っているけど、都会の住人は見た事無い人が居ても不思議じゃないか。まして、殿下は王族だし未だ子供だしね。


「水が滾々こんこんと湧き出す様を良く見て覚えて、イメージしてください。」

「出来た!」


 前回は少ししか水が溜まらなかったエリック殿下であるが、その手のひらには満々と水が溜まっている。って言うか、あふれてますよ殿下。水が跳ねてお召し物が汚れてます。今日の衣服は汚れても良い物ですよね?殿下。

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