第75話

 重い足取りでも前に進んでしまうもので城門についてしまった。警備兵に懐から宰相閣下の書状を出して見せる。


「使いの者を呼んで参りますので、暫くこちらでお待ち頂けますか。」


 と小部屋へ案内された。結構豪華な内装の部屋だよ、ここ。きっとある程度身分のある方がお待ちになる部屋じゃないかな。気休めだが、ソファに腰掛ける前にお尻の辺りを叩いて埃を落としておいた。この部屋の中で埃を落としている時点でアウトだと思うけど。気持ちの問題さ。


 案内人を待っている間、俺は昨夜の女神様方のお話を思い返していた。何か気になる事を仰っていた様なんだが。

 俺が昨日やった事と言えば着火の魔法でデモンストレーションをした位だよな。ん?着火の魔法。火魔法?


 そうか!俺は風魔法と水魔法が使える事になっているが、火魔法については知られていないはず。いや魔獣のスタンピードを維持するために小さい火球パチンコ玉を使ったけど、城壁からかなり離れていたから気付かれていないだろう。


 風と水魔法を使う俺が昨日火魔法を使ったから、陛下と宰相閣下が驚いた顔をされた訳か。

 迂闊だったなと後悔したが、今後は慎重に事を進めようと反省した。


*****


 お迎えが来たので後ろをついて行く。相変わらず、何処をどう通っているのか分からない。もしかするとわざと順路を変えて覚えられない様にしているのかも知れないね。


 そして昨日と同じ部屋に到着。入室して待機していると、王妃殿下と王子王女殿下がお越しになった。国王陛下と宰相閣下はいらっしゃらない様だ。


 そう言えば習い事って大体〇曜日の□時からって決まってたような気がする。少なくとも前世俺の時はそうだった。王族ともなれば他にも習い事があるだろうに、俺勝手に来ちゃったよ。後で宰相閣下にご相談しよう。そうしよう。


「今日も魔法を教えてくれるの?」


 昨日火魔法を上手く使える様になってご機嫌な王女殿下からお声が掛かった。


「勿論でございます。エマ殿下。」


 宰相閣下に頂いた資料に王族方の御尊名が書かれていたので助かった。本来この国の人間なら知っていて当たり前だ、何て思われていたら困ってましたよ。何なら、アンちゃんは外国人だし。

宰相閣下、出来る人だ。実際に書類を作成したのは当然部下だと思うけど。


 俺は何を教えれば良いか手がかりを求めて、王子王女殿下方を軽く鑑定してみた。


名前 :エリック

性別 :男

年齢 :9歳

職業 :ヘルツ王国第一王子

レベル:4

スキル:火魔法、水魔法、土魔法


名前 :ギルバート

性別 :男

年齢 :5歳

職業 :ヘルツ王国第二王子

レベル:2

スキル:水魔法、風魔法、土魔法


名前 :エマ

性別 :女

年齢 :3歳

職業 :ヘルツ王国第一王女

レベル:1

スキル:火魔法、水魔法、風魔法


 俺は土魔法は秘匿する事に決めたので、教えられる魔法は火、水、風の3元素になる。エマ王女とまる被りだな。素直そうだし懐いてくれている様なので、ま良いか。

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