第68話
「散水!」
それは簡単に言えばシャワー見たいなものだ。一か所に集中して浴びせるのではなく、細く分散して相手に浴びせるのだ。当然射程距離は短くなるので接近戦専用の技である。
「熱っちぃぃー!」
散水を浴びたフレッド隊長は地面を転げまわった。実は散水する時に水の温度を45℃位、熱い温泉くらいの温度に上げておいたのだ。0℃近くの水を浴び続けたフレッド隊長は熱いお風呂にいきなり飛び込んだ様なものだ。
もっと熱くして熱湯にする事も出来るのだけど、模擬戦だし大火傷して死んじゃうから止めておいた。
俺は懐からセラミックスナイフを取り出すと、転げまわるフレッド隊長に突き付けて騎士団長を見た。
「勝負あり。勝者ジロー。」
最後は魔法ではなくナイフを突きつけての勝利だったが、まあ良いよね。陛下と宰相閣下は何か聞きたそうな顔をしているけど、今日は疲れましたとか適当言って帰ろう。アンちゃんも泣きそうな顔をしてるし。
「いやー、負けちゃったよ。最後にあんな手で来るとは思わなかったな。」
と言いながらフレッド隊長が握手を求めて来た。最初の印象と違って、案外良い人なのかもしれないな、この人。
「でも本当の戦争だったら熱湯で相手を殺せるんでしょ?」
「え?ええ、まぁ。」
こっちの手の内を読んでいる辺り、やっぱり油断できないな、この人。
もう疲れた。帰りたい。と思っていたところ、宰相閣下から帰宅のお許しを得た。やった、帰れる。と思ったのもつかの間、明日も登城する様にとの
*****
と言う訳で、やっとビーム辺境伯の邸に帰って来た。帰宅してすぐにビーム辺境伯とお話させて頂いた。
「明日は何をするのでしょうか?」
「儂にも分からん。」
そうだよね。今日もビーム辺境伯は途中からその他大勢の一人になっちゃってたしね。明日は花を持たせようかな。無理だな、きっと。俺にそんな器用な事求めても無駄だよ。
俺もアンちゃんもへとへとだ。アンちゃんなんて、賄い料理を3人前くらい食べてたもん。
あの細っこい体の何処にそんなに入るのか調べてみたい、なんて思ったけどダメダメ、セクハラ発言はいけません。社会的に死ぬよ。こっちの世界ではどうか知らんけど。
翌朝、俺はいつもより早く目を覚ました。疲れてぐっすり眠ったからその分早く目が覚めたのかも知れない。アンちゃんはいつもの朝練をしている様だ。ちょっと顔を出してみようかな。
「お早う、アンちゃん。」
「お早う、ジロー。私昨日の模擬戦負けちゃったよ。ジローは勝ったのにね。」
朝からアンちゃんはへこみ気味だ。何とか元気を付けさせないといけないな。
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