第65話
用意して貰った巻藁があっという間に切り倒され行く。おなじみ
「ふぅ。」
本当は全然疲れてなんか居ないけど、さも疲れて一息入れた様な振りをしてご感想を聞いてみる事にする。
「如何でしたでしょうか?」
「素晴らしい!さすが辺境伯領の畑の刈り取りを1日と掛からずに終わらせただけの事はある。」
「ありがとうございます。恐悦至極に存じます。」
ご満足頂けたようで何よりだ。
「この魔法を使える者が増えれば農作業もかなり楽になるかと。」
お、宰相閣下からも高評価を頂きました。でも、現在俺一人しか使えないからね。
「この魔法で敵を打ち倒す事は出来ないのか?一人で大勢の相手が出来ればかなりの脅威だぞ。」
こちらは騎士団長からのご質問。確かビーム辺境伯にも同じ事を聞かれたなあ。
「平服や軽装備の兵であれば怪我をさせたり或いは殺す事も出来るかも知れません。しかし、帝国兵の様に鉄鎧を着た兵には効果が薄いと思います。」
うーむ、と考え込む騎士団長。俺に何させる気なの?団長は近くにいた団員に声をかけて何事か話をした。
「はっ。畏まりました。」
団員Aは元気よく返事をすると、向うへ走って行った。まさかお前を的にするから向こうで立ってろ、とか言ってないよね。
倉庫の方へ走って行った団員Aは、暫くすると鉄鎧を持って戻って来た。そして鎧を巻藁に被せた。あれを狙えと言う事だろう。あー良かった。人が真っ二つになるさまなんて、見たくも見せたくも無いよね。
「ジロー、試す様ですまぬがあの鎧に向かって魔法を撃ってもらえるか。」
「承知しました。」
思った通り鎧を的にして魔法の威力を試すらしい。巻藁が的で良かったね、団員A。どのみち鉄鎧を切り裂く様な威力は見せられないので弱ーく撃つけどね。アンちゃん以外この魔法の真の威力は知られてないから大丈夫でしょ。
結果、鉄鎧には浅い切れ込みが入る程度と分かった。というか、そのくらいに調節したんだけどね。
「関節部の装甲の薄い部分を狙えば、かなりの深手を負わせられると思うが。」
団長、まだ諦めてないのかよ。
「申し訳ございませんが、この魔法は精密に狙いを定める事が難しいのです。」
苦しい言い訳で何とか押し切った。もう諦めて下さい、団長。
やれやれ終わりかなー、と思って辺りを見回してアンちゃんを探した。アンちゃんは騎士団員と一緒に離れたところで控えている様だ。何か考え事をしている様な顔をしているから、一人反省会をしているのかも知れない。
と油断していたら、陛下からまたお声が掛かった。
「今度は水魔法を見せてくれ。」
やっぱりまだ許して頂けないのですね。
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