第63話

「儂も3歳の時に夢でコーラス様にお会いした。その時同じ事を言われたよ。」

「別の流派を学ばれたりはしないのですか?」

 ちょっとした興味で聞いてみた。


「女神様から直々にご指導賜ったのだぞ。他の流派なぞに鞍替え出来る筈あるまい。」

「仰る通りでございますね。」


 いや、コーラス様絶対おざなりに教えてるでしょう。大体、3歳や4歳の子供に理解を求める方が無理だと思いますよ。


「ジローは風と水の魔法に適性があるそうだな。見せてはくれぬか。女神様の秘伝かも知れぬが、教えて欲しいのじゃ。王家の者も大魔法が使えれば色々と便利なのでな。」


 良かった。火と土の魔法については知られていない様だ。何だか家庭教師ポジションになれみたいな雰囲気なのだが、きっと俺には務まらないよ。でも見せるくらいなら問題ないかな。それにしても王族が魔法を使いたいなんて、何かきな臭い理由がありそうだな。


「それは構いませんが、別の場所でも宜しいでしょうか。」

 謁見の間が大変な事になっちゃうからね。騎士団の訓練場で披露する事になりました。この後、俺はドナドナされて連れて行かれる訳だ。もうこの際だから気になっている事を聞いてみた。

 

「もう一つお聞きしても宜しいでしょうか。」

 宰相閣下も騎士団長も”平民風情が”と思っていらっしゃるのか、ジロっとこっちを見るのを止めて頂けませんか。何処とは申しませんが、キュっと縮み上がります。


「何故王家の皆様はコーラス流、それも女神様直々にご指導賜るのでしょうか。」

「そうか。お前はその歳まで山奥で暮らしていたから世情に疎いのだな。」

 そう言って陛下が教えて下さった。


「このヘルツ王国の始祖、つまり儂の先祖は勇者だったのだ。そして魔王軍を打ち破り、この地を平定して建国したのじゃ。」

 おおう、出ました勇者。そしてやっぱり居たんだ魔王。コーラス様にお尋ねした際に魔王討伐はしなくてもいいって仰っていたのは、すでに斃されていたからですか。よかった。これでおっさんも安心してぐうたら出来るってもんだ。


*****


 それから騎士団や近習の皆さんも加わって、騎士団の練習場まで連れて行かれた。勿論、主賓の国王陛下もいらっしゃる。俺は早く帰りたかったのに。残業代はつかないのだろうか。未だ定時内っぽいから無理か。


 練習場に入ると先に退出していたアンちゃんが騎士団と一緒に訓練していた。と言うより模擬戦していた。アンちゃん稽古好きだから生き生きとしてるね。


「アンナの相手をされているあちらの方はどなた様でしょうか。」

 まあ、名前を聞いたところで知らないのだけど、間を持たせるために聞いてみた。


「彼は一番隊隊長だよ。」

 騎士団長が教えてくれた。名前はオキタとか言うのだろうか。









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