第62話

 元々報奨金は渡すつもりだった様で、受け取ってから帰れと言われた。陛下自ら手渡し、何て事はありません。俺たち平民ですから。こんなお近くに寄れただけでも恐れ入り奉ります。


 偉いさんから先に退出して漸く開放されるかなと思っていたら、宰相閣下がとんでもない事を言いだした。


「ジロー以外は退出して宜しい。」


 これにはみんな驚いた様で、アンちゃんだけじゃなくてビーム辺境伯まで振り向いて俺を見てるよ。一人だけ残るなんて碌な事にならないよ。みんなと一緒に帰して。お願いします。


 一人だけ居残りを命じられたので、アンちゃんと辺境伯は謁見の間から出て行った。俺?相変わらず土下座してますよ。すると、何と国王陛下から直接お声が掛かった。


「ジローよ、もっと近くへ寄れ。そして人払いせよ。宰相と騎士団長だけは残れ。」

 俺、完全にアウェイですから。他の偉いさん大臣の方々も訝しみながらも陛下のお言葉に従って退出していった。何、一体何が始まるの?


 皆さん退出されて、4人のみになった。平民の俺が陛下に近づくのを躊躇っていると、何と陛下の方から歩み寄って来た。当然他の二人もご同行されている。


「ジローよ。もっと楽にして良いぞ。ここからは非公式の場だ。」

 陛下からお声が掛かった。そんな事言われたって無理無理。前世の時だって、勤め先の社長と直接口きいた事も無いのに。


「お前の魔法の流派はコーラス流と言ったな。ではお前は女神コーラス様にお会いした事があるのだろう?」


 驚いた俺は思わず顔を上げて陛下の顔を見ちゃったよ。


「実はな、王家の者が身につける魔法もコーラス流なのじゃよ。」

「確かにコーラス様とお会いした事があります。」

 あれを会ったと言って良いのだろうか。大体は夢の中に出て来るだけだし。たまにお声も聞こえるけど。


「おお、やはりそうか。」

 陛下の御説明によると、大体3、4歳ぐらいの時に、夢の中でコーラス様とお会いして魔法の使い方を伝授されるらしい。


「だが、残念な事に王族の中にお前ほど強力な魔法を使える者はおらん。そこでお前がコーラス様から伝授された内容を教えてはくれぬか。」


 以前、コーラス様に魔法を広めても良いかお尋ねした事があったな。軽くいいよってお返事だったけど。全員が上手く使える訳じゃないとも仰っていたっけ。コーラス様からお聞きした内容を陛下にお伝えしても問題ないですよね、コーラス様。


「私が女神様にお会いした時にはこの様に仰っていました。”要はイメージよ。グーっと溜めてバーっと出すのよ。”、と。」


 それをお聞きになった陛下は何とも言えない顔をされた。


「儂が子供の時にお聞きした内容と全く同じじゃ。」







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