第47話

 スパルタ教官アンちゃんのおかげで、俺はそれなりの速さでミュエーを走らせる事が出来る様になった。やっぱりおっさんは褒めて伸ばして貰った方がいいよ。


 ミュエー用の頭巾も出来たので被せてみた。嫌がるかと思ったが、案外大人しく被ってくれた。余計なものが見えなくなったせいか、前より御しやすくなった。


「頭をすっぽり覆っちゃってるから、ある程度大きな音への対策にもなってるのかしらね。」

 アンちゃんもミュエーを走らせながらそう感想を漏らした。

「これなら魔物のスタンピードに紛れて突破できそうね。」


 この前アンちゃんが大怪我をしたのも、結局大人数に囲まれてしまったからだと俺は思っている。ミュエーの機動力があれば突破できて逃げ切れただろう。


「今回は私が先頭よ。遅れないで付いて来てね。」

 俺たちは夕暮れまでミュエーを走らせる練習を続けた。


*****


「約束の場所はこの辺りよね。」

 俺たちは完全に暗くなる前に森の狩人と決めておいた待機場所へと移動した。今森の狩人達は追い込み作業中だろうか。それとも未だ準備中だろうか。ともかく俺たちはここで待機だ。

 ミュエーに餌と水をやったあと、俺たちも食事にした。今回は森の浅い所にいるので火は使えない。よってまた携行食の夕飯だ。アンちゃんはお肉が食べたいって顔をしているが、今日はありませんからね。


 夜は倒木に二人並んで座り、一人が見張りをしている間もう一人が眠る事にした。

寒いのでなるべくぴったりくっつく様にしている。ヤラシイ意図は無いからね。うん、寒いからだから。アンちゃんだってくっついて来るし。


 明日成功するかどうかは俺の魔法次第だ、という事で俺が先に眠る事になった。

「あたしの方が体力あるでしょ。」

そう言われちゃうと反論できないな。


 直ぐに寝ろと言われても直ぐには寝付けないので、その間アンちゃんと少し話をした。

「この戦争だって、ジローの魔法をバンバン撃ち込んじゃえば直ぐに片が付いちゃうんじゃないの?」

「うーん、そうかも知れないけど、俺はあんまり目立ちたくないんだよ。」

 もう十分悪目立ちしている様な気もするが。


女神様コーラス様も好きに暮らせって仰って下さったし。こっちの世界の事はアリア様から凡そ教えて頂いたけど、実際に色々なところを見てみたいんだよ。俺は。」

「働きが認められれば、王様付きとか貴族様にも成れるかもしれないわよ。」

「興味ないよ、俺は。お酒飲んでぐうたらしている方が性に合ってるのさ。それじゃあ、アンちゃんは何になりたいのさ?」

「私は・・・」


 この辺りで俺は眠ってしまった。アンちゃんは一体何になりたいと答えたのだろう?


 

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