第41話
俺は火を絶やさない様に、一晩中枯れ枝を焚火にくべていた。敵に見つかるかもと思ったが、幸いここまで追って来る奴は居なかった様だ。おそらく陣地の警備を固めているのだろう。
明け方になってアンちゃんが目を覚ました。熱は下がった様だ。
「アンちゃん、俺が誰か分かるか?何処か痛い所は無いか?頭痛くないか?目はちゃんと見えるか?気持ち悪くないか?左腕はちゃんと動くか?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、ジロー。私は追っ手と戦って斬られたけど、何とか追っ手を撒いて、ここまでたどり着いて、・・・そこから記憶がないわ。」
良かった。どうやら記憶はしっかりしている様だ。
「体は何処も痛く無い。って、斬られた腕も他のところも治ってる!あなたが治してくれたのね、ジロー。ありがとう。」
良かった、初めての回復魔法だったけど上手く行った様だ。ありがとうございます、コーラス様、そしてアリア様。
「って、ちょっと待って!」
突然アンちゃんが大声を出した。
「防具が脱がされているし、それにこれ私が着てた服じゃない。」
「けっ、怪我の状態を診るのに脱がしたんだよ。」
「見たのね?」
「え?」
「裸よ。私の裸、見たんでしょう?」
そういうと顔を真っ赤にしたアンちゃんは向こうを向いてしまった。
「もうお嫁に行けない。」
アンちゃんは小さな声でぼそっとつぶやいた。
「責任取ってよね。」
俺は怪我を治しただけなんだが。俺は色々と
”ぐう~~~っ”俺の腹が鳴った。そう言えば昨日の昼頃から何も食べていない。急に腹が減って来た。ひとまずアンちゃんはそっとしておく事にして、俺は食事の用意を始めた。昨日馬車に火をかけた時に、ついでに食料を少々失敬して来たのだ。
焚火に枯れ枝をくべると、俺はナイフで切ったハムを枝に刺してあぶり始めた。こう言う焼き物の火加減は遠火の強火だからね。
暫くするとハムの焼ける良い匂いがして来た。俺は一串とると
「わ、私にも頂戴。」
俺は一串取ってアンちゃんに渡してあげた。アンちゃんは怪我もしたし、体力が消耗しているのかもしれないな。
「もう一串貰って良いかな?」
「未だあるからゆっくり食べなよ。急に沢山食べると胃が受け付けないかも知れないから。」
「・・・うん。」
よしよし。餌付け作戦成功。
二人で焚火に当たりながら、しばし黙々とハムを食べた。
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