第30話

 ゴブリンから魔石を回収して数を数えると32個だった。バラバラになった1匹からは回収出来なかったので、全部で33匹いた様だ。

 村に戻るともう夕暮れが近い。村長に魔石を見せると依頼完了のサインを貰えた。


「大したもてなしは出来ないが、今夜はここへ泊って行きなされ。宿屋は無いので、わしの家の部屋を使ってくれ。」


 村長に礼を言って泊めてもらう事にした。夕食は野菜の切れ端が入ったスープと蒸かしたイモだ。あまり豊かな村じゃないから、これでもごちそうだろう。


 部屋に案内されると、ベッドは1つしかなかった。ここはアンちゃんの部屋だろうか?


「この部屋しかないんだ。悪いが今晩は二人でこの部屋で寝てくれ。」

そう言い残すと、村長はそそくさと出て行った。何か勘違いしてませんか、村長さん。


 いつもの様に床に干し草を敷こうとしていると、アンちゃんからお声が掛かった。


「わ、私は一緒に眠ってもいいわよ。そろそろ寒くなって来た事だし。」

顔が真っ赤だよ、アンちゃん。

「二人でくっついて寝れば、少しは暖かいでしょ。」

おっさん間違いを起こしちゃったらどうしよう。今日は寝酒は止めておこう。


「それよりね、聞きたいことがあるの。」

アンちゃんが真面目な顔で俺を見つめて来た。


「ジローさんの流派はなんて言うの?詠唱もしていないし、せいぜい魔法の名前を唱えるくらい。」


 さすがアンちゃん。今日の役割分担から言って、後ろから俺の事を良く見ていたらしい。


「聞いた事が無い魔法も使うし、威力も桁違いだわ。」


 もう胡麻化しきれないな。俺はそう思った。嘘は死ぬまでつき通せば本当になる、と昔何かの映画で言ってた気がする。でも途中で嘘とばれたら、騙されてた方は悲しいよね。アンちゃんを騙す様な事はしたくない。


 俺は正直に話す事に決めた。こんな話をする時は少し酒が入ってた方が話しやすいんだけどな。いやいやダメだ。間違い起しちゃうかもだから、ダメ絶対。


「アンナ。俺は、俺はねこの世界の人間じゃないんだ。別の世界から来た人間なんだよ。びっくりしただろう?」

「ううん、この世界の生まれだろうと別の世界から来ようと、ジローはジローに変わりないじゃないの。」

「ありがとう、アンナ。」


 そして俺は前の世界で一度死んだ事。アリア様にこの世界へと送り出された事。コーラス様から魔法と加護を頂いた事を伝えた。


「・・・だから無詠唱で強力な魔法が使えるのね。いつかは帰ってしまうの?」

「元の世界には戻れないよ。向こうではもう死んでいる訳だし。」

「良かった・・・。」

 何故かアンちゃんは嬉しそうな様な顔を見せた。

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