第29話

「それじゃあ予定通り、後ろは任せた。」

「任せて。」


 今日は俺が前衛でゴブリンを刈る係だ。なんたって、人型を殺す事に慣れるための訓練だからね。後衛のアンちゃんは討ち漏らしの処理や、万一俺が対処できなくなった死にそうになった時のフォローに入る事になっている。


 基本的に俺は接近戦はからっきしダメだから近づかれたら危ない。そこで予め洞窟の入り口付近に撒菱まきびしを仕掛けておいた。いつも裸足で森を駆け回るゴブリンもさすがに痛いみたいだ。


「アイスネイル。ロックネイル。」

 氷で出来た釘と岩で出来た釘をばら撒く。一本一本はそれ程大きい訳ではないので一発で仕留めることは出来ないが、何発も食らえば行動不能になる。イメトレの結果が出て良かった。


「これなら最低限大丈夫そうね。」

 アンちゃんからもお墨付きを貰えたよ。

 

 しかし油断は大敵だ。”足元のお悪い中、釘の雨が降る中をご来場頂きまして誠にありがとうございます。”なんて余裕をかましていたら、横の草むらから別のゴブリンの一群が襲って来た。


 隙を突かれた俺はゴブリン共の接近を許してしまう。と、その時


「しっ。」

っと息を吐きながらアンちゃんが駆け寄り、先頭のゴブリンを切り斃した。こぼれる内臓。オエ、やっぱりまだグロいの苦手だは。


「大丈夫?」

 頼もしいねアンちゃんは。おかげで態勢を立て直す事が出来た。


 どうやらこいつらは見回りに出ていた別動隊の様だ。全部で十数匹いる。先頭の数匹が一刀両断にされたのを見て、ちょっと戸惑っているみたいだ。よしちょっと実験に付き合ってもらおう。


「アンナ、そいつらゴブリンから離れて。」

 アンちゃんが後ろに戻るのを確認すると、俺はあのパチンコ玉火球を撃ち出した。

着弾するところ見た事無かったもんね。


 パチンコ玉火球がゴブリンに命中すると、”ドゴン”と言う音と共に命中したゴブリンはバラバラになってしまった。バラバラ死体は結構グロいよ。それだけではく、近くにいた3,4匹も巻き添えを食って焼け死んだ様だ。


「あんなに小さいのに凄い。」

 アンちゃん何度も聞く様だけど火球ファイヤーボールの事だよね。いや口には出しませんよ。セクハラ発言厳禁。


 残りの奴らはアイスネイルで片付けると、俺たちは周りの安全を確認した。やっぱり慎重さって大事。

 

 逃げたヤツが1,2匹いるかもしれないが、とりあえず群れを全滅出来た様だ。


「依頼は完了出来たみたいね。」


 魔石を回収しながらアンちゃんが話しかけて来た。


「それで人型には慣れた?大丈夫そう?」

「もうちょっとかな。血を流すくらいなら平気だけど、内臓ドバっとかバラバラ死体とかは未だちょっと。」

「そんなの慣れよ、慣れ。またこの手の依頼を受けましょう。」

 アンちゃんは案外スパルタみたいだ。

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