第26話
未だ帰るのには早い時間なので、俺たちは採集を続ける事にした。この草原にしかない薬草もあると買取りの時に教えて貰ったしね。
と言っても草原の浅い部分なので貴重な薬草は見当たらない。最近不足してるって言ってたから乱獲されたのかも知れないな。ダメだよ、株を全部採って行っちゃ。少し残しておかないと増えないからね。
アンちゃんに、これは食べられる、これは腹を下す、なんて教えていると、地響きを立てて迫って来るヤツがいる。遠目にみて、巨大イノシシみたいだ。
「な、あれはパラライズボア!どうしてこんなところに。」
パラライズボアと言う名前で、体中に麻痺毒がありその牙に刺されると死ぬ事もあるそうだ。主食はあのトゲトゲした毒草らしい。良くあんなもん喰うねオマエ。あ、毒草喰ってるから毒持ってるのかな。前世でもいたよね。フグもそうだった様な気がする。思い出したらフグひれ酒飲みたくなって来た。
「あたしが食い止めるから、その間に逃げて。」
アンちゃんが盾役になると言う。でもあのイノシシ、どう見てもこの前の模擬戦の時のガチムチ剣士より大きいぞ。アンちゃんではいなす事は出来ても、押し留めるのは無理そうだ。それに猪は意外と俊敏だと聞くし。
「俺が魔法を打つよ。もし外したら対処を頼む。」
さてどうしよう。ここは仮称ウインドカッター ver.2・・・面倒くさいからもうウインドカッターでいいや。それでいこう。
幸いにして真っ直ぐ突っ込んでくるので狙いは付けやすい。歯を縦にするイメージでバーっとやってやった。魔法はコーラス様に”適当に”教えて頂いたので、今後魔法の流派を聞かれたらコーラス流と名乗ろう。
猛スピードで走って来る大猪と同じく猛スピードで飛んで行く見えないカッターがぶつかり合った。その結果、
「すごい。あのパラライズボアを一撃で・・・」
アンちゃんに良い所を見せる事が出来た様だ。満足満足。
体中毒だらけなので、パラライズボアの肉は食べられないそうだ。でも、偶に珍味、しびれるのがイイと言って食べて毒に当たる奴がいるらしい。どこの世界にもそういう人は居るんだね。
縦真っ二つにしてしまったので、魔石も砕けてしまっていた。一応回収して持って帰る事にする。安くはなるが引き取ってくれるらしい。
「それと、牙が高値で売れるのよ。薬の材料になるとか。でも血や肉なんかにも毒が含まれているので牙を抜く処理が大変なのよ。って、何してるの!」
いや牙が売れると言うのでナイフで切り取ろうとしている所なんですが。手が血まみれになってますね。ちょっとヒリヒリする位で大した事無いよ。もしかすると、俺はパラライズボアの肉を食っても毒に当たらないかもしれないなぁ。
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