第27話

 アンちゃんは真面目な性格だ。朝か晩に一人で稽古をしている。修行の旅の途中だしね。一度稽古に混ぜて貰ったが、とても無理だ。剣って重たいのよ。素振りだけでもう無理無理。俺には酒飲んでだらだらしている方が向いている。


 大草原での一件以来、益々熱心に稽古している。もしかして俺のせいか?もしかして、やり過ぎちゃったか?今のままでは俺と不釣り合いとか考えているのだろうか。おっさんとしては、若い子とお話出来るだけでメリット大なんだが。前世ではお金払ってお話ししに飲みに行ってたからね。


 とは言っても何もしていない訳ではない。魔法はイメージ、コーラス様がそう仰っていた。要はイメージトレーニングだ。もうちょっと魔法の種類を増やしたい。もう少し小わざを増やしたいなと。一撃で大イノシシ真っ二つなんてやり過ぎだろう。


「ちょっと良いかしら。」

ドアをノックしてアンちゃんが声をかけて来た。

「入ってもいい?」

「どうぞ。」


 改まって何の話だろう。ちょっと緊張するな。

「近々戦争があるかも、って言う話は聞いているでしょう?」

ペア解消の話じゃないみたいだ。あー良かった。


「戦争になったら私たち冒険者も戦わなければならないの。ジローさんは対人戦の経験はある?」

「え?そうなの?」

アリア様から戦争に行くなと止められているのだが。


「なんで知らないのよ。冒険者になった時に冊子貰ったでしょ。ちゃんと読んでないの?」

ハイ、すみません。開いてもいませんでした。税の免除の代わりに、有事の際に兵士と一緒に戦え、という事だそうです。


「戦争は人が相手だから、魔獣を殺すのとは違うのよ。出来る?」

イノシシが真っ二つになったのを見てグロいと思うようなメンタルの俺に、人が殺せるだろうか。今のままじゃ無理だな。


「だから、戦争が始まる前に人型の魔獣を斃して慣れておいた方が良いと思うのよ。」

確かに人っぽい形のヤツを殺しまくれば感覚がマヒ慣れるかもしれない。


「今のあたしの腕ではあなたを守り通せる自信が無いの。」

確かにペア組んでいても、俺が木偶の坊だったら足を引っ張る事にしかならないよね。万一死んだらアリア様とのお約束も守れない。


「了解だ。で、何と戦うんだい?」

「ゴブリンよ。」

テンプレモンスターが今頃出て来たよ。


「ゴブリンは繁殖力が強いから冒険者組合に討伐依頼が出てると思うわ。事務所へ行ってみましょ。」

俺はアンちゃんと一緒に組合事務所へ向かう事にした。

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