第5話
遠くに見える山を目指して歩いていくが、全然近づいている気がしない。順調に進めないのだ。ジャングルでもないし、藪をかき分けて歩いている訳ではない。草原を歩いているだけなのだが、歩き辛いのよ。だって、背丈が低いとはいえ草ボーボーででこぼこしてるんだもん。平らな道って偉大だね。
もう一つの理由は体力の無さだ。現代日本の酒飲みおっさん(今はシラフだけど)の体力を甘く見てもらっては困る。電車バス最高。車移動LOVE。自分の足で移動するのがこんなに辛いとは。この世界で暮らしていたら体力付きそうだな。
山という目標物があるのでほぼ真っ直ぐに進んでいるとは思うのだけど、どの位進んだんだろう。いい加減一休みしよう。喉も乾いたし。そこで俺はハッと気が付いた。俺イモしか持ってないじゃん。お金もあるけど、見渡す限り、飲み物の自販機なんてなさそうだ。人間何も食べなくても少しはもつが、水分補給しないとあっという間に限界が来ると聞いた気がする。周りに水場は無いし、草なんかたべてもなー。
地べたに座って休んでいる時に、コーラス様のお話を思い出した。魔法が使えるんだった。水も出せるかも。早速やってみよう。
「確かイメージしてグッと溜めてバーっと出す、だったっけ。」
コーラス様教え方アバウト過ぎだけどやるしかない。周り草原だし、日差しも結構あって、普段運動不足の身としては結構つらい。とにかくイメージだ。
何か頭の中には500mlのペットボトルが浮かんではいたが、”水、水、水、きれいな冷たい水”と俺は懸命に思った。
次はグッと溜めるである。溜めるって、何を溜めるのかな?水でしょうか?やっぱりここは魔力的な何かだろう。特に何も感じないけどどうすりゃ良いのか。その時前の世界で武術の達人は丹田に気を溜めて、見たいな話しがあったのを思い出した。丹田っておへその下辺りだったはず。息を吸ってそこへ気(魔力?)を集める。これもイメージだ。暫く続けていくとおへその下辺りが暖かくなって来たような気がする。
最後はバーっと出すだ。バーっとって言う事は勢いよく出てくるのだろうか?大体ラノベなんかだと掌を前に突き出して水を出す感じだよね。ものは試しだ、やってみよう。俺は右手を前に突き出して念じた”水っ”。その瞬間掌の先から水がすごい勢で吹き出して遠くまで飛んで行った。アレ?これって攻撃魔法じゃね?水が飲みたいのに遠くへ飛ばしてどうするよ。頭の中で『水魔法を覚えました』と声が聞こえた。
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