第13話
ⅩⅢ
なるほど。
確かに、これは分からない。
出口と言われる場所に来たとき、俺はそう思った。
それと同時に、俺がどこから来てどこへ帰ろうとするのか、それもはっきりと分かった。
俺が落ちてきた場所、今は明かりが点いてはっきりと分かるのだが、そこは、急な階段が真上に伸びた異様な場所だった。
高さは10メートルほどだろうか。
ぽっかりと、真上に空が口を覗かせている。
ほぼ90度と言ってもよい、その階段はほとんどハシゴと形容するのが正しいような代物であった。
角度もあるし、一段一段の幅も広い。
普通の階段の1・5倍から2倍ほども段差があり、それが上へ20段ほども続いているのだ。
廊下の右手側にその階段はあり、そして廊下はまだ先へと続いている。
この先に何があるのか、俺にはそこまで詮索は出来ない。
ゆかりがその先に消え、30秒ほど経った時、この階段は突然姿を現した。
何か歯車が動くような機械音がしたかと思ったら、突如として右手に階段が現れたのだった。
ゆかりは再び姿を現すと、
「ねっ、分からないでしょう?」
悪戯っぽく笑いながら、そう言ったものだった。
まるで忍者屋敷だ。
ふと、そう思ったとき、俺の背中に電気が走った。
石川五右衛門という名前の猫。
石川ゆかり。
忍者屋敷。
そうか、ゆかりは石川五右衛門の末裔だったのか。
俺の中で、一つの答えが出た。
それをゆかり自身に問いただす事はしなかったが、俺の中ではその答えは十分に納得できるものだった。
「何やっているの?早く上がって。」
一瞬、俺は自分の考えに没頭していたようだ。
「落ちそうになったら、私が下から支えてあげるから。」
「あぁ、ごめんごめん。」
ゆかりの声で我に返り、ゆかりの方を見たとき、ここで俺はまたひとつ、気が付いた。
ゆかりは短い丈のスカートを履いていたのだ。
これでゆかりが先に登ったら、スカートの中は丸見えになってしまうだろう。
もしかしたら、ゆかりはそんな邪な事を俺が考えていたのではないか、と疑ったのかも知れない。
少しだけ怒ったような口ぶりで、俺を急かした。
「ごめん。」
もう一度謝ってから、俺は階段に足をかけた。
しかし登ってみると、これがまた大変だった。
階段の明かりが自分の影で途中までしか届かないので、そこからは手探りで登る羽目になったのだが、階段の角が普通のものと違って丸く削れていて、滑る。
何故丸くなっているのか、俺は少し疑問に思ったが、それより今は登るのが先決だ。
とにかく滑らないよう、一段一段、慎重に登って行った。
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