第3話
Ⅲ
妙にゆっくり走るなあ。
俺は前の車に対して、そう感じた。
ここは40キロか50キロの道路のはず。
140号を走っているので間違いが無ければ、50キロ道路だろうか。
いや、この道は左折してから片側1車線に変わったので、40キロだろうか。
しかし今、前を走る2台は、よくて30キロ・・・下手をすれば20キロ台半ばから後半での走行をしている。
前の方に赤信号でもあるのだろうか。
そうも思ったが、しかし蛇行する道の先に信号などは見えなかった。
人は理解できない行動に遭遇すると、不安な気持ちになるもので。
このとき俺自身も、何となく不安な気持ちになっていた。
前を走っている車は、実は道を失っているのではないか。
すぐ前の車も、その前の車について走っているが、実際にこの道はどこへも続いていなくて、行き止まりになっていたりするのではないか・・・。
3台連なって道を引き返す様を一瞬想像し、ばかばかしい、とすぐ自分の考えを否定した。
方向も間違っていない。
道は1車線とはいえ、しっかり舗装された、国道か県道だ。
あいにくと俺は夜目が効かない体質なので、これだけ暗いと道の横に立ててあるルートを示す看板は確認できない。
ここはまだ140号なのだろうか、道路標識は左右どちらの道も140号と書いてあった気がするのだが、分岐した地点からすぐに別の国道か県道に変わってしまった可能性は無いだろうか、いつの間にかどこか横道にでも入り込んでしまってはいないだろうか・・・。
次第に道は大きく蛇行をはじめて、果たして本当に正しい方向へ進んでいるのかすらも全く分からなくなっていた。
そこへ来て、前の車が突然ゆっくり走り出したのだ。
この幾つかのマイナス材料だけで、俺はすっかり不安になってしまった。
どこかに信号があったら、左折か右折して道を戻そうか。
そうも考えた。
そんな事を考えていたのは、数分にも満たない時間だったろう。
速度を落としていた前の車は、やがてすぐに速度を上げ、また40~50キロでの快適なドライブが始まった。
こうなると先ほどの不安は一掃され、ああ大丈夫だ、とほっと胸をなでおろすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます