第2話
Ⅱ
140号を、昼間の時間であれば真っ直ぐ走って帰った経験もある。
その時も、何の用事の後だったか、時間が空いていたのでドライブがてらの帰路だったと思う。
当時の記憶をゆっくり辿りながら、俺は車を走らせていく。
この記憶が正しければ・・・
長瀞方面から、小川町を経由して254(にーごーよん)に乗り換え、ぐるっと大回るするようなルートをとって元の道に戻れるはずだった。
・・・だが。
暫くもしないうちに、この以前の記憶は全く役に立たなくなった。
というのも、140号が2本に分岐しているところで、俺は「真っ直ぐ」走るのを止めて、左斜めに向かう道を選んだからだ。
このときの理由について聞かれても、やはり「何となく」としか答えられないのだが、強いて理由挙げるならば。
車通りの少ないこの時間に、たった2台だけ前を走っていた車が、2台とも立て続けにこちらのルートを取ったから。
だろうか。
方向としては、この140号を右手に、407を左手に走って行きさえすれば、間違う事は無い。
そういう気持ちもあった。
斜め左前方へ伸びるこの道は、行った事が無い全く知らない道ではあったが、方角的には家に向かうルートである、と考える事も出来た。
瞬間的にそう判断した俺は、前の車に続いてウィンカーを左へ出し、未知のルートへと足を踏み入れて行くことになった。
しかし、冷静に考えれば、この自分の行動は正しいものだったかは分からない。
明るい時分ならともかく、この深夜という時間帯で、見知らぬルートをとるというのは、やはり尋常ならざる行動だったのではないか、と、そう思う。
これは特に結果的な話をしているのではなく、常識的に考えて、やはり「ちょっとした冒険心」では片が付かないような、ある種不可解な行動だったと思う。
何かに引き寄せられたかのように、俺はこの道を選んでいた。
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