第23話 転入生

帰り道、やっぱりこのパーティーは急にしては、準備が整っていたし、変だなと感じた。

強制イベントのようだ。ゲームのストーリー?誰かが何かあったのかしら?

一応、エバーソンに

「何か変わったことあった?」

と聞くと、

「モテモテの塊が何箇所かあって仮面をしてもわかる人にはわかるだなぁ。あとそのモテモテの塊は、フリップ王子様と、サリバン様ともう一人がわからなかったけど、髪型は、黒髪で長かったな」

ガルバン共和国の伯爵令息だな、きっと。

馬車の中は、エバーソンが興奮して話しながら家に着いた。


お母様やお父様に報告した。

「仮面パーティー?舞踏会じゃなくて?」

二人とも驚いていた。すると、お母様が

「フリップ王子様は、身分とかそう言うもので婚約者を決めたくないから、あえて顔が見えないパーティーで見極めようとしたのではありませんか?」

と言う。

そうかもしれない。ただ単に楽しみたかったからかもしれない。しかしそれでも、転生者だからか違和感を感じた。

「エバーソンが凄い興奮していましたよ」

と言うとお母様は大きな溜息をこぼしていた。

そして私は、何故か…今までだったら、お父様に全て報告していたのに、バードの事や飼い主に会った事を言うのをやめた。

理由はわからない。でもなんとなく、秘密にしたかった。

お父様に執務室に呼ばれて、

「今回ゲームの強制イベントか?何か感じたことはある?」

と聞かれ、やはりそれを疑うよねと思う。

「準備がきちんと整っていたこと、そして異様なテンションの上がり方。これはなんだ?と思いました」

「以前から決まっていた?サマーパーティーの代替なのにとなるとサマーパーティーでさえイベント、ミッションだった可能性もあるな」

誰の…と聞きたいが聞けない。

「そうですね」

と言うとお父様は、私を見て、

「この状況、ガルバン共和国に留学の話はないと思って欲しい。デマルシア帝国、ガルバン共和国の動きがわからない。この国で学園で過ごしていくしかない」

と言う。私は

「まるで逃げ道を塞がれたみたいですね」

と言った。言葉にすると、より現実味が増す。

「アクション系の恋愛ゲームとして組立したのか…」

「お父様?」

「ガルバン共和国の人間が二人も我が領に流れついた。その前のカトロ領ではなく。ルイーゼ覚悟した方がいい。これは普通に考えておかしい。強制的な感じがする。間違いなく巻き込まれている。何役かはわからない。気をつけるんだよ。学園を休む事も念頭に入れときなさい」

「お父様…。ありがとうございます。しかし情報も欲しいですし、目立たず頑張ってみるつもりです」


そして夏期休暇の最終日、生徒会室の掃除をした。その時に各学年に転入生が入ってくる事を知った。

転入生なんて、一番怪しいキャラじゃないかしら?思わず、掴んでいた椅子が曲がってしまい、直した。


新学期


私のクラスには二人の転入生が入ってきた。

クリスティーナ・ガレンさん

ライラ・カトロさん

クリスティーナさんは、背の高いひょろりとした体型で前髪で目を隠しているような感じでガルバン共和国の留学生。

そして、ライラさんは、カトロ侯爵の隠し子らしく養子縁組した元平民。

これは生徒会のメンバーから聞いた話。レイラ様も凄いが皆さん、情報を得ている。


カトロ侯爵夫人はご存知だったのだろうか?アリサ夫人のお茶会では、息子を生徒会に入れたがっていたけど。そしてカトロ侯爵の令息は、レイラ様を襲った後から、領地療養。

よくわからないまま、放課後になり生徒会に行く。三年には、我が領で助けた伯爵令息が転入してきて、二年生にはデマルシア帝国の王子と従者が転入してきた。レイラ様が

「人質みたいなものね」

と言った。そんなことになっているの?急展開過ぎない?なのに、仮面パーティー?

「わけわからない」

と呟くと後ろから、フリップ王子様とサリバン様が来た。

「何がわからない?」

と聞かれ、驚いてブンブンと首を横に振った。

「相変わらず、面白いね」

とサリバン様は言った。

「レイラ嬢、人質なんて人聞きの悪い言い方よしてくれ。何年も前から決まっていたことだ。日程の調整が合わなくて、ナタリア王女は従来どおり来たがレガシー王子は、公務などでこの時期になっただけだ。逆に一年後私もあちらの国で勉強させてもらう予定になっている」

と言った。レイラ様は、すぐにカーテシーをして、

「失礼しました。殿下。勝手な憶測を口にしました」

と頭を下げた。

少し驚いた。あの気位の高いレイラ様がフリップ王子様を殿下と言い、謝る。そしてフリップ王子様も王子の威厳、尊厳みたいなものを感じた。

「皆さんには申し訳ないが生徒会に、レガシー王子を迎え入れたい。あちら側の希望で学生ならではのイベントなどの運営を見て勉強したいとのことだ。よろしく頼みます」

と言った。これで二年生は、4人になる。レイラ様は、一年生も増やすべきと以前言っていたが黙っている。

そして文化祭の準備として、各クラスにアンケートを取る手筈になり、私は、一年生のアンケートの依頼と回収になり、サリバン様は、場所や予算、警備をチェックして、フリップ王子は、来賓などの手紙や招待客の厳選をする。今年は、王子様が二人もいるので、招待客も警備も大変そうだ。


私は、二年生のメンバーにアンケートのやり方を教えてもらった後、一年生の先生に話を通しに行く廊下で、校舎の壁にいるレイラ様とサリバン様を見かけた。

レイラ様は、落ち込んでいるようで、話し声が聞こえる。

「嫌われてしまった、どう思われたかしら?王族の皆様の為にと思ったのに空回りしたわ」

「大丈夫だよ。フリップは気にしてない。ナタリア王女の件もある。当たり前のことを言っただけだろう。みんな腹では思っていたし、レイラが悪いわけじゃない」

サリバン様とレイラ様の会話。別の道に行くべきだと判断した。

盗み見は良くない。あの感じは、レイラ様は、フリップ王子様が好きなのかしら?サリバン様は、応援している関係性なのかしら?男女のことはわからない。

でもわかることがある。

あの二人には二人だけの時間が流れていて、間には入れない。それが、恋なのか友情なのかはわからない。

背筋を伸ばした。

振り返るつもりもない。

先生に文化祭の件をお願いしなければいけないのだから。

「へぇ〜、ルイーゼ様、気にならないのですか?私は気になるな。あの二人」

壁の横から隠れるような人影とともに呼び止められた。

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