第17話 私の本質
種芋配布を北部で終えてあったので、南部で配布をまた執事に頼み領主館へ帰った。お祖父様と相談するらしく、私は、お祖母様とお茶会だ。
「ルイーゼは学園に行って更に活発になったわね」
としみじみ言われた。
「そうですか?自分ではわからないですが、魔法を使えるようになって、怖がらなくなったといいますか…」
と言い淀んでいると、お祖母様は、
「それは、とても危険な事ね。だってルイーゼは変わってないで魔法という武器を振り回して強くなった気でいるって事でしょう」
お祖母様は、丁寧な口調なのにグサリと刺さる言葉だった。
「そうですね、誘拐された時も、一人で行動して救援を待つ事もしなかったです。自分ならやれるって思いました。口に出してみると恥ずかしい。自意識過剰です」
と言うと、お祖母様は、頭を撫でてくれる。
「そうね。前のルイーゼなら膝を抱えて救援を待ったでしょうね。不思議ね、積極的になる事は悪い事じゃないけど、貴族は目に余る者や目立ちすぎる者を排除しようとしてしまうわ。ルイーゼ、気をつけてね」
「お祖母様、ありがとうございます」
本当にそうだ。最近、魔法が使えるようになって、私は特別って思ってた。
これじゃクラスに馴染めるわけない。
みんなとは違うのよって匂わせていたんだもの。
考えてみれば、お茶会の時、席ご一緒していた令嬢も学園で会っても話しかけてはくれなくなった。
サリバン様にも気をつけてとは言われてた。こんな意味もあったのかもしれない。
「どうしましょう」
どう言うとお祖母様は、笑って
「なるべく、笑って心穏やかに、それが令嬢の基本です。今日も館に戻ってくれば眉間に皺を寄せて殿方達と同じ顔をしていました。それは令嬢としていけませんね」
「はい」
と声が小さくなった。本当に自分が解決しなきゃって心のどこかで思っていた。特別な私がなんとかしなきゃって。一人で戦争なんて解決できるわけもないのに。なんて傲慢になっていたんだろう。
お祖母様と別れ自室に戻ると反省すべきところがありすぎて心が痛かった。オレンジかかった空を見て、前の私ってどうだったのかなと思う。
「ハァー」
と大きな溜息を吐くと、夢を思い出す。
頭が硬いとか言われてたっけ、つまらないと同じかしら?
机の上に薄い赤色のハンカチがある。リトマス商会で買ったハンカチだ。
これに刺繍をしよう。
図柄を決めるのも楽しい。
猫にしようか花にしようか。
そんなことを考えていれば夕食になり、また一日が終わる。
トルネス公爵のアリス夫人からお茶会の誘いが三日後にあり返事を書く。お祖母様に確認してもらいながら、書き終え、執事に託した。
持ってきたドレスで一番上等のドレスで参加する。お父様は、王都に戻られた。私は、このまま2週間領地で過ごす事に決めた。
お祖母様に言われ、気づいた、私にそんな大きな問題解決は出来るわけない。大人しく待っていようと決めた。刺繍をしたり、お祖父様お祖母様と南部の村に行ったりしようかな。
お祖母様とお茶会の支度をするのも楽しい。お母様と視点も考え方も違う。お祖母様はその空気や場所、人に合わせるようなドレスの色や髪型、アクセサリーを選ぶ。お祖母様はきっと人に癒しを与える人だと思う。お母様は、我が道を行く人で力強い女性。では私は、どんな女性を目指そうか?
領地にいるこの時間が、改めて今の私にとって大切で必要な時間だとわかった。
時間が空けば刺繍を刺している。図柄は、ダリアにした。このハンカチとダリアの花がビビっときたため。細かい刺繍は久しぶりで何故かウキウキする。
私、刺繍とか好きだったし、本を読むのも好きだった。最近周りにいる人が、学園でパワフルすぎてついていくのに必死で、自分の時間とか今までの私が置き去りになっていた。私はそんなレベルではないのに無理して背伸びして同じ位置に立とうとしていたことに気づいた。
一番は、つまらないって言葉に引っかかっていた。今までの私を否定されているようで。魔法や生徒会、目立つ花形だったらつまらない子ではないのか?
よく考えてみたら、そうではない。悪役令嬢にもヒロインにもなりたくない。そう考えると、フリップ王子もサリバン様も魔法や生徒会の花形に属しているから話しかけてくれるだけ。
…
以前の私は、注目も相手にもされてないじゃない。
人の根本は変わらない。
いくら武器を振り回したって強気になっただけ。
お茶会の日
トルネス領の領主館で昼食をご馳走になりながらお茶を楽しみましょうと書いてあったので昼前には到着予定だ。
朝から髪型や化粧、ドレスの着付けと忙しい。
準備が出来ればすぐ出発だ。お祖父様とお祖母様に挨拶だけして馬車に乗り、トルネス公爵の領主館へ向かった。
トルネス領主館は、ピンクローズが咲き、目で見て楽しく匂いも甘く、門から玄関前まで続いた。
馬車から降りると執事が迎え入れてくれ、庭に案内された。ガーデンパーティーのようだ。
真正面に薄い黄色のサマードレスをふわふわと風に揺らす妖精みたいに見えるアリサ夫人がいた。カーテシーをしながら、本日の招待に感謝の言葉を言った。周りからこそこそと話し声が聞こえたが、伯爵家の娘が来たらこうなるだろうなとは予想はしていたので気にしない。
好奇な目を向けられる。
「よく来てくれました。一番若い令嬢です。皆様ひとつよろしくお願いしますね」
とアリサ夫人が言えば、ピタリと噂話が止まった。アリサ夫人に御礼の会釈をして、メイドに席を案内される。
そこには、三年生の生徒会役員のレイラ様がいた。
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