第18話 アリサ夫人のお茶会

「レイラ様、お隣失礼します」

「えぇルイーゼ様も招待されたのですね」

「私は、たまたまです。今領地にいるので誘って頂けたのです」

と少し言い訳がましくなってしまった。レイラ様と話すのは緊張する。気品とかオーラが圧倒的にあるからだろうか?スターと話してるような気持ちになる。

「そう、生徒会の整理や掃除の日には来れますか?」

「はい、もちろん行けます」

と言うと、

「あなた達の代はフリップ王子様がいらっしゃるから、執務の量も大変と聞いているわ。もう一人生徒会に入って頂いた方がよろしいと思うの」

こんなに私と話をしてくれるレイラ様は、初めてで驚いている。生徒会にもう一人。

「私は、決まったことは歓迎します」

と言うと、

「あなたから推薦したい人はいますか?」

と聞かれた。

「すいません、レイラ様、私クラスで馴染めていなくて、誰が相応しいとかがわかりません」

と言うと、横から、

「お話中失礼します。レイラ様、私の息子が学園に通ってまして、中々裁量のある子ですので生徒会に入れてくだされば活躍出来るかと思います」

と言う貴婦人。レイラ様は、

「カトロ侯爵夫人ご令息は、どのクラスですか?Aクラス以外の生徒を生徒会に入れるわけにはいきませんの。勉学も等しく生徒の見本になるのがあるべき生徒会なので」

と言うとカトロ侯爵夫人は真っ赤な顔で

「失礼な小娘だわ」

と扇子を振り上げた。レイラ様はいたって普通の顔をしている。一人で地団駄踏んでいる貴婦人がいるように見える。

そこを後ろから、サリバン様が

「いかがなされましたかカトロ侯爵夫人?」

と声をかけて、

「席まで私が案内致します」

と言い、連れて行った。

相変わらずレイラ様は涼しい顔をしていた。何故そんな平然としていられるのだろうか?これが侯爵令嬢の気質、気品とかなのかな?真似出来ない圧倒的なクールビューティーさに呆然と見ていた。

「何やっているのルイーゼ様。口が開いてますわよ。全く。本当にあなたがフリップ王子様を救い出した英雄なの?にわかに信じ難いわ」

「レイラ様、なんでそんなことまでご存知なのですか?」

「あなた本当に…。令嬢にとって情報は武器です。私達が生徒会を離れるのは文化祭です。生徒会は生徒の代表です。僻み妬みがあるでしょう、いなしていくのですよ。心配ね」

「はい」

しばらくすると、サリバン様がこちらに来た

「レイラ、もっと柔らかく断れたのではないか?」

と言うと、レイラ様は、

「なら、頑張ればいいのです、両道できない者に生徒会が出来るはずないですし、更に勉強が遅れてしまいます」

「相変わらずだな。そう言えばいいのに」

レイラ様は、勉強が遅れることを心配していたのか。

なんて言うかお似合いの二人だなと見て思った。足りない言葉を補えるような関係なのかな。レイラ様ならきっとどこにいたって気品やオーラで圧倒するのだろうなと感じる。

アリサ夫人がテーブルに来た。

「学園の話を、教えて下さいね」

と言われた。レイラ様が先日のサマーパーティーの話をすると、アリサ夫人が

「刃物を持って侵入するなんて怖いわね」

と言い、そして私とサリバン様を見ながら、

「サリバン様が助けに入った後ルイーゼ様を抱き抱えて控え室に行き随分お二人注目を浴びていましたよ」

と言って口元を扇子で隠した。アリサ夫人は

「まぁ、そんなことがあったの。事件があった事しか聞いてなかったから知らなかったわ、ルイーゼさん大変だったわね、怖かったでしょう」

と言い私を見る。初めて知ったような言い様だが、多分知っていたのではないかと思った。

「私が呆然としいるところ、サリバン様には助けていただき感謝致します。怖くなり醜態を晒し、心配までしてくださり、同じクラスのクラスメートで本当に良かったです」

と言うとレイラ様は、少し驚いた顔をしたが、アリサ夫人は満足そうな顔をした。お祖母様の言ってることがわかった。このお茶会に参加している貴婦人は、皆耳をこちらのテーブルに傾けているのを感じた。

きっと学園に通っている子供やその情報が回ったのだろう。もしかすると、サリバン様と恋仲ではという疑問まで。


あぁ、そうか。そうではないと証明するために私は、今日ここに呼ばれたのだ。先程のレイラ様の言い方とアリサ夫人が、事件があった事しか聞いてないと言ったことは一緒だ。

説明を省くな。誤解させるな。


とりあえず笑顔を絶やさずいた。サリバン様は、何か突っ込もうとしているようだったが、アリサ夫人と各テーブルを回っていた。私は、美味しい食事とお茶、デザートをいただいた。

あまり、味を感じなかった。レイラ様は、

「何も知らない子と思ったけど、少しは、嗜みや矜持はあるし、空気を読めるのね」

と言われた。レイラ様はお母様に似ているなと思った。会は解散になる時刻。アリサ夫人が一人づつにお土産をくれた。

「今日は、わざわざ来てくださりありがとうね。貴重なお話を聞けたわ」

と言われた。クラスメートを強調して正解だったのだなぁと思い、お母様に言ったらライバルを蹴散らす為にもっとアピールしなさいと言われるだろう。

私の心は、揺れていた。

私は…


「次会う時は、生徒会室の整理整頓の日だな。またな」

とサリバン様は言った。日常的に。

私も会釈して、

「そうですね。よろしくお願いします」

と答えた。心を揺らさないよう注意しながら。

帰りの馬車は、この上なく疲れた。


その日の夜は夏なのに少し冷えた。

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