第15話 私の選択
とても大きい宿屋に案内され、そこには料理を提供するためのテーブルが準備されていた。
匂いも美味しそうだけど、見た目がオシャレで驚いた。花のように彩られ形成された野菜。
「綺麗な料理ですね」
と言うと、サリバン様が
「これは、母上が考案されたんだ」
と言う。
「まぁ、素敵ですね」
と言えば、アリサ夫人もにこやかに笑う。楽しい食事は続き、トルネス公爵とアリサ夫人が
「領地が隣同士なのだから、お茶会に来て欲しいわ。今回はサラサ夫人にはお見えになれないけど是非ルイーゼさんに来て欲しいわ」
と言われ、公爵から
「アリサは身体が弱くてあまりお茶会や夜会に参加出来ないから、ルイーゼ嬢から聞く話はきっと刺激的で楽しいと思うな、頼むよルイーゼ嬢」
と言われれば、
「わかりました。是非参加させてください」
と答えた。高位に逆らえるほど、強くない。
とてもアリサ夫人は白く細い。
サリバン様から部屋を出る時に
「どうしても母上が君と話してみたいとおっしゃったんだ。珍しいんだ母上が我儘を言うなんて」
と言われた。意外にサリバン様ってママっ子か。と思って笑うと
「何がおかしいんだ?」
と聞かれなんでもないと言った。
「領地経営の勉強は、順調ですか?」
と聞くと、
「まぁ、大変だけどそれなりに発見もあって勉強になるね。見方が変わるというか、私が今対策しなければいけないのは、動物達が畑を荒らす被害」
と難しい顔をしていた。
「では、夏休み中は、こちらにずっとですか?」
「王都も隣だけど、1週間は、仕掛け作りや村をまわりながら対策を講じるからこっちから離れられないかな」
と聞くと
「では、お茶会で会えるかわかりませんね」
と何気なく言った。その時、私には深い意味は全くない。サリバン様は、笑って言う。
「会いたいわけ?ルイーゼ嬢可愛い」
「何、何言ってるんです、そんなことは言ってませんよ。別にそう意味ではなく」
「はいはい、わかった。そんな顔真っ赤にさせて興奮しないでよ。都合が合えばぜひ」
と、いつもの紳士的態度で笑って言った。
トルネス公爵家の皆さんとは別れ、また馬車に乗って領地に向かう。
急にお父様が、
「そう、決めたのかい?」
と聞かれた。お父様もこれをゲームの選択肢と受け取ったようだ。顔を真っ赤に先程興奮した様子を見られているので困ってしまうが。
うーん、実はまだ迷っている。決めた、と言いながら揺らぐ私は、恋愛初心者だ。次にどう動けば良いかわからなかった。
「お父様、迷惑がかかるようならすぐ撤退しますから」
「撤退って何、ハハハッハハハ」
と笑ってる。
「私自身どうしたらいいかわからないのです。この先が見えないというか」
「それで良いんだよ」
とお父様は言う。その方が面白いからかしら。
「何故ですか?令嬢としては話のネタになると思います」
「選択出来て失敗してやり直せない、それが普通さ。この世界がゲームって考えれば、慎重に裏を読んでしまうが、僕達は、生きている。サラサも断罪もされてない。ルイーゼも先が決まってない。明日運命の出会いをするかもしれない」
そうだ、こうしなきゃいけないは、ないんだ。失敗とか成功とかばかりで自分の本当の気持ちにも向き合ってない気がした。
そんな話をしていればマリノティオ伯爵領に着く。縦に長い領地は、さほど大きくはないが北部と南部で名物料理が違う、それも私は楽しみだ。
お父様が、
「ただいま」
と言うと領民が手を振る。町はトルネス公爵領に比べて大きくはないが、自慢の町だ。
特に、早くからお父様は、領地の水源問題に取り組まれ各農村に井戸がある。我が領地が最初で病気などを防いだと名前付きで文献に載っている。お母様いわく、
「旦那様は、表彰されて爵位も上がる話を分不相応と言って断ったのよ」
と自慢気に言っていた。
お父様って本当に不思議。
領主館に入れば、お祖父様やお祖母様がいて、いつも通り暖かく迎えてくれた。
明日は、朝から北部に行って種芋配布でお昼にはとうもろこしを食べる。これが楽しみだ。何故か北部しかコーンを作ってない。鮎の塩焼きも北部名物だ。さらに北に山があるので大きな川がある。
美味しい食べ物にウキウキしていた。
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