第12話 邂逅
ここはどこ?同じ服で白いコップを持っている。
「先輩も携帯ゲームぐらいやればいいんですよ。乙女ゲームってだけで、いやらしいとか偏見です。頭が硬いとか言われたなら絶対おすすめですよ。気楽にできるし」
「でもゲームってお金かかるわよね」
「先輩、そういうところです。もっと気楽に、欲しいものやこれだけはの時に課金して、別に最後ハッピーエンドになろうがバッドエンドだろうとやり直し出来るし、ヒロインも選べるし、恋の相手だって、私は、絶対にイケボで選びます。聞いているだけでハッピーですもの」
「そんなにおすすめなの?お試しにダウンロードしてみようかな」
「意外に先輩みたいな人がハマるんですよ」
「ハマらないよ、私は。だってつまらないだの頭硬いだのだよ、うふふ、キャッキャッの世界は無理よ」
「じゃ先輩は、悪役令嬢とかその娘とかヒロインに選んでみたらいいんじゃないですか?嫌われ者からの逆転劇。私は、王道の平民スタートにしてます。今、いい声で囁いてもらってます。私は課金してアイテムゲットして悪役令嬢なんかには負けませんよ」
「ねぇ、ゴールってみんなそれぞれよね。王子様を選ぶの?」
「それが王道ですね。夢あっていいじゃないですか」
「そう?平民から王子様と結婚って大変でしょ?」
「まぁ、どうなんでしょうね。悪役だって幸せになる物語ですから。そう言えば、この乙女ゲームは魔法を買えるんですよ。平民も貴族も関係ないかもしれませんね。だから強かったり便利だったり、ミッションに有利になります。あと、アイテムもヒントをゲットするんですよ。先輩。頑張って」
ハッとした。
私じゃない私が誰かと話している。
こんなにはっきりした記憶は、初めてだ。ベッドから立ち上がろうと前を見れば、花の入った花瓶が二つ。
選択…という文字が見える気がする。
お父様に報告しなければいけないし、お礼状も書かないといけない。
扉からはメイドのリマに
「夕食の時間です」
と言われる。
夕食を食べる私の様子を見て、お父様もお母様も
「どうしたの?フリップ王子様にサリバン様からお花とお手紙を頂くなんて、ルイーゼ凄い事よ。嬉しくないの?」
とお母様は驚いている。
「お返事なんて書けばよろしいのかしら?」
と言えば、お母様は、楽しげにあれやこれやの世界に行ったのか参考になる本を貸すわ、と食堂を出て行く。
「お父様、大変です。お二人から花が届いて、返事を書かなければと思ったのに、眠気に負けました。その夢で私は、先輩って呼ばれていて、ゲームを進められていました。ヒロインを選べると、悪役令嬢や悪役令嬢の娘を進められ、その子は、王道は、平民の娘と王子ルートと教えてくれました。課金で魔法を買える、アイテムを買えると言っていたんです。ミッションに有利に臨む為課金すると教えてくれました。それから、マークさんとキースさんですが、キースさんの赤い目を見て意識を無くしました。学園にいた時赤い目ではなかった。私が手にした魔法の使い方あれも課金のアイテム?」
「いや、だって、あの本は僕が買ったよ。なら僕にアイテムが降りてくるよね」
「そうですよね、前の私が課金するタイプには見えなかった、お父様はゲームに課金されたのですか?」
「夢見る君へ、これは無課金だ、作成チームの一員が言うんだから間違いない。僕が亡くなった後で2が生まれたと思ってる。前の君は、経験者だったのではないか。忘れているだけで、魔法も買ったとか」
「柔らかくする魔法ですか?買いますか?普通、何に使えるかわからない魔法を選ぶかしら?それより、お父様がこのゲームの作成者だったんですか、驚きです」
「まぁ、ストーリーだけさ、作画とか声とかどんどん大きくなって、完成した時、妹とやってみた時サラサの存在を気にしたのはそこでのやり取りだしね。やっぱり2は始まっているって事だよね」
「お二人の花を見て、私の頭に浮かぶのは選択って言葉でした。どうしましょう、お父様」
と言えば、お父様は、やっぱり楽しげに
「ルイーゼの好きな方を選択すれば、いいんだよ」
「人ごとだと思って、お父様は、ゲームを楽しんでいらっしゃるわ」
と言うと少し大袈裟に手をつけて、ジェスチャーをしながら、
「作成者って気づいたのは最初からだけど、楽しんでいるかな、自分の奥さんや子供が巻き込まれて良しとはしないけど…
この物語の行く末には興味があるかなぁ。ちゃんとしているかなぁって。ゲームだけどゲームじゃない、僕らは生きてる。だけど、やっぱり僕は、客観的に見てしまうのだろう。本当にサラサもルイーゼも楽しい」
と笑って言うお父様に私は、
「そう言うところ、溢れ出てますからね。本当に逃げ道用意してくださいよ」
と頼んだ。
部屋に戻れば目の前に花の花瓶が二つ。
あの夢では、前の私は、ルイーゼをヒロインに選択しているんだろうか。おすすめされていたけど記憶になし。お父様の言う通り、好きな方を選択かもしくは選ばない。
…
「決めた」
お母様が用意してくれた用例集を見ながらお礼状を書く。そして執事には渡した。
ゲーム的には次のミッションかイベントに進むためのフラグなのだろうなと感じた。
つまらない私が、転生者で父も転生者で伯爵様で、母は悪役令嬢で元侯爵令嬢で、私は魔法が使えて、化け物って言われてヒロイン?って私にはキャラ盛りすぎだろう⁉︎
ベッドでゴロゴロンと興奮していれば、運動会を思い出した。私ってスタートで好調で途中で転ぶか抜かされるかばかりで考えてみれば最初にゴールテープを切った事がない。
急に怖くなった。
私の人生ってこんなイケイケだった?
生徒会、フリップ王子様、サリバン公爵令息、いやない。私の日常がこんな光が当たる物語みたいな活躍するはずない。
課金という言葉が脳裏に浮かぶ。こっちの世界からは課金って出来ないのかしら?
ふと思う。魔法にアイテムって。こっちで買えるのではないだろうか。逆輸入みたいなものだ。明日、お父様に相談してみよう。
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