第11話 襲撃
私は、目で追ってしまった。そして、私の目とその女性の目が合う。
女性は、鬼の形相になり、
「サラサの娘、悪役令嬢の娘、悪役令嬢が断罪されないから悪い、お前達が悪い、お前が悪い、こんなのおかしい、私がお前を断罪してやる」
と叫びながら、真っ直ぐ突っ込んでくる。
何ごと?油断?
いや、何言っているの?
「キャー」
と叫ぶ令嬢達。誰にも止められず、突き進む女性。
後退りしたが、後ろに食事が乗ったテーブルがある。これ以上後ろには下がれない。
「死ねーーー」
こんな言葉を言われるなんて何をしたのと思いながら、手を前に出し、来ないでと思いながら、気を放出するが触れない事には柔らかくならない。
魔法も不発か、
「キャー」
何とか小刀を掴むことは出来た、グニャと曲った物よりもこれから始まるパーティーの料理にぶつかって来た衝撃で倒してしまった。
生徒会としては心苦しい。
そんなことをどうして考えてしまうんだろう。
女性は驚いていた。そして呟く
「悪役令嬢は魔女」
ブルブル震えながら今度は大きな声で
「化け物めーーー」
と叫ぶ。手を振り上げたところを騎士に捕われる。
驚いた。何が起きた?
化け物って何。グニャと曲った小刀が手から落ちる。
騎士の顔も異様な驚きの顔で私を見る。
「見ないで」
と言いたいのに声が出ない。
えっ、化け物。
私の前に立つ女性と騎士、そしてスッと間に入る人。
その人は、すぐに小刀を足で踏む。
「早く、その女性を捕らえ、事情を聞いて下さい」
と騎士に向かって言い、そして私の方に振り返った。
「何故レイラ嬢から離れた?」
と少し怒りの口調で言う。
何故かわからない。
お父様でもないのに、この人は、全部知っているのではないか?と思うぐらい、この一瞬で安心してしまった。
そうなると私の涙腺も崩壊だ。
オロオロし始めて、踏んだ在らぬ方向に曲がった小刀を騎士に渡し、その人は、私を抱えた。
お姫様抱っこだ。周りからの悲鳴。
さっきの女性の襲撃事件とは全く種類が違う悲鳴が響き渡る。
「下ろして下さい、サリバン様。みんな見てます」
と泣き声でいうと、
「泣きながら言っても説得力なし。ルイーゼ嬢、意外に重い」
…
「最低」
「ヴハ、ハハハッ」
と笑いながら、控え室に入った。
「ハアー、鼻が真っ赤だ。今日のパーティーは、無理だな。我が家から馬車を出すよ。怖かっただろう、いくら魔法があってもさすがにあれは、耐えられないよな」
と言って、何だかいつもと違く感じる。
何だろう。ドキドキする。襲撃の怖さ?化け物って言われた怯え?
真っ直ぐ見られると、さすが公爵令息、顔立ちも凛々しいがオーラが、気品高いオーラが半端ない。
「勘弁してください」
思わず言ってしまった。
眩しい生き物を避ける習性なのか、オーラがない私の引け目か?
「ハハハッハハ、何それ。ルイーゼ嬢って前から思ってたけど、変、いや面白いよね。目立ちたくないからって三つ編みとかって今時いないでしょう。逆に目立ってたよ、気づかなかったでしょう?みんな一度は、君の名前を聞いてたよ『誰』って」
驚いた。目立っていたなんて。
「本当に?」
頷くサリバン様。まだ笑ってる。
何気ない話は、私の恐怖心や怯えを取り除いてくれる。
心に温かい何かが生まれるみたいなざわめきと鼓動を打つ音が激しい。
騎士の一人が部屋に来て、馬車の用意が出来たと言った。馬車の停留場まで、送ってくれるのに、まだもう少しと思ってしまう。黙って歩いていると、
「今日は、ゆっくり休んで、明日の片付けには来なくていいから、みんなわかってくれてる」
と言う。私は、
「ありがとうございます」
と言うのが、精一杯だった。
次の日、なんとなく魂が抜けたような状態だった。お父様もお母様も
「災難だったね」
と同情してくれる。そして襲撃の犯人は、ミリナさんのお母様だった。
聞かされた時お母様も一緒だった。お茶会を何度もしていたし、学園では、同級生。どんな心情かと、そっと横を見る。
お母様は震えていた。ブルブルと。
怒り露わに前にある机を、バーーンと叩いて立ち上がる。そして、
「なんて人なの。私の娘を襲撃するなんて。悪役令嬢だなんだって言われたのよね。意味わからないわ。ずっと前からそんな事ばかり言って、男爵家よね。旦那様、事業の取り引きなどは一切なさらないで、私、実家にも連絡致します。潰しましょう」
…
お母様の目から炎が見えた。
魔法はお母様の家系からか?なんてくだらないことを考えられるぐらい、お母様が怒って下さる。
「何ルイーゼ笑っているのですか?」
とお母様がキィーキィー言っている。
お父様も我慢出来ずに笑っている。
これって元悪役令嬢ぽい。凄いゲームキャラぽい、未プレイゲームだけど、私も体験しているようだし、本当にお父様は、楽しげにお母様を見てる、絶対後で怒りの方向が向くのに幸せそうだ。
部屋に戻るとフリップ王子様から花と手紙、サリバン様からも花と手紙が届いていた。
お二人にお礼の返事をしなくてはいけないと思いつつ、急に眠気が来る。
「笑いすぎて疲れたのかなぁ?」
と雪崩れ込むようにベッドに入る。
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