第5話 動き始めたゲームストーリー
学校に着くと、騒がしかった。あちらこちらで一人の令嬢が数日前に消えた、そんな話が聞こえる。王子絡みなのかしら?王女様の側近の方が何かした、まさかね。
今日は、どこもその話題だった。
帰るころ、子爵令嬢だと名前を聞いて驚いた。
お母様に連れられて行ったお茶会にいた令嬢。
アリーナ・タオ様
お父様が転生者の娘と疑う子。
お父様に報告をすぐした。お父様は難しい顔して
「まだ入学して1か月弱だ。イベントも何もないな」
「はい」
「その令嬢が騒いでいたとかは」
「わかりませんが、他クラスで、休み時間ごとに来る人ではないと思います」
「そうか、ルイーゼ学校を休むかい?」
「私に何があるわけではないので、まだ行きます」
それに、王女御一行だって、誘拐や神隠しなんてしないだろう。
翌日、いなくなった令嬢のことは、みんなの記憶になかったかの如くいつも通りだった。
いつものベンチでお昼ご飯を食べる。
「なんか変」
と呟いた。どこがかはわからないけど。
何かに書き換えられているみたいに、令嬢の名前は出ない。
本のページは進まない。気になる事が多くて、集中出来なかった。
翌日、もう一人お父様が転生者の娘と疑う子、男爵令嬢のミリナ・セイカール様が教室にいた。
「フリップ王子様、一緒にランチをしましょう」
と王女の前で誘っている。王女御一行が睨みをきかしている。私でも感じる圧迫感に男爵令嬢の子が気づかないはずないのに。
「あなたよそのクラスよね、自分のクラスに戻りなさい」
とナタリア王女の側近の一人が言う。
「フリップ王子様、とっても怖いです」
と泣き声で言う。
「なんなの」
と令嬢が言うと、赤毛のフリップ王子の側近令息が、予鈴が鳴ったから教室に戻った方がいいとミリナさんに言って、彼女は渋々教室を出て行く。
王女御一行は怒りが収まらないらしく教室内で愚痴を言っている。
ミリナさんは、朝の襲撃をきっかけにして教室に来るようになった。何が起きたのかわからないが、廊下側には見物人までいる、Aクラスは賑やかな状態だ。
お昼休憩は教室をすぐ出た。ミリナさんが来れば、王女御一行の怒りが爆発するかもと予想して巻き込まれないための避難だ。
いつものベンチはやめて、中央の何人かいるベンチで食事を取りながら本を読む。今読んでいる本の内容が全く頭に入らない。朝からフリップ王子にまとわりつく令嬢がいるという話があちこちで出ている。
新しい話題には飛びつくのか。
「面倒くさいなとか巻き込まれたくないなって思ってる?」
と後ろから声がしたサリバン様の声だ。
心の中で、うわーと思いこの場を離れなくてはと立ち上がる。
「図書館に用がありますので」
と礼をするとオールスター揃い踏みで眩暈がしそうだった。
何故ここにフリップ王子や騎士団長の令息や側近の方達がいるのか?と思えば、甲高い令嬢の声が
「フリップ王子様、一緒にランチをしましょう」
と聞こえる、反対側に行こうと決め、図書館とは違う食堂方面に歩いた。
「あら、これからランチ?ルイーゼさん」
と前からナタリア王女に声をかけられて、挨拶をする。
「ナタリア王女様、食堂は混んでますのでベンチで食事をとって、今ゴミを捨てに来たところです」
「あなたも他所のクラスの生徒が来てうるさくされたら勉強に差し支えるわよね。迷惑でしょう?」
と聞かれた。
前にお父様にお母様が学園で言葉を誘導されたって、まさかこんな感じ。これ、私が言った事になるように仕向けられている?
まさかと思いつつ、
お腹を押さえ、
「痛た、ナタリア王女様、お話中、すいません、先程からお腹が痛くて、救護室に行かさせてもらいます」
と慌て立ち去る。
本当に胃が痛くなったので救護室に行った。
嘘から本当になったかのように、休ませてもらい、考える。
わからないが罠がたくさんあるような気がするのは、ゲームストーリー2があるのではないかとお父様に言われたから、疑心暗鬼?私にゲーム知識はない。一年前から思い出そうとしても『夢見る君を』がわからない。
わからないって怖いわ、色々疑ってしまう。
もしこれがゲームで2だとするなら誰がヒロインなのか?
お父様に聞いた時、ヒロインは選べるから、転生者の方は、自分がヒロインだと勘違いしたのではないかと話していたが、今回は?
「そろそろ教室に戻りなさい」
と言われ、現実に戻る。
教室に戻るとフリップ王子様と側近の皆様がいなかった。何故いないか聞く友人もいないので、最後の授業を受けて帰る。
次の日、ミリナさんは教室に来たが、フリップ王子様達は、学園に来なかった。
昨日と違う緊張感がある教室になった。
誰も話さない。
ナタリア王女様がミリナさんにいつ何を言うかわからないぐらい苛ついているようで、ナタリア王女様達は、昼食前に帰ってしまった。
「ねぇ、ルイーゼ様、あなた何か知ってる?」
突然話しかけられて、振り向けば、ミリナさん。
「私は何も知りません。そうよね、一人で本読んでいるだけですものね。お母様があなたには注意しろって言うし」
「何のことですか?」
「あぁ、こっちの話」
ゲームか転生者の話だ、きっと。
ミリナさんは、私を気に留めずどこかに行く。
ミリナさん自身は、私のことなんて気にしてないがお母様の方って、ミリナさんは転生者じゃない。
いつものベンチでやっとゆっくり本を読みながら、昼食を取る。
王子達王女達がいないだけで、こんな静かなんて、生まれ時期が違えば楽しい学園生活を送れたかもしれない。お父様、こうなるの知ってて今がある気がする。
お父様やお母様に今日の学園がとても穏やかだったことを告げると、お母様は
「良かったわ、後は素敵な人を見つけるだけね」
と言われ、お父様には
「嵐の前の静けさ」
なんて脅された。
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