第31話 科学の詰まったユニフォーム
試合当日、俺はとても気持ちのいい朝日を浴びながら目を覚ます。久しぶりの安眠も相まってかなり気分がいい。
食堂に入るとファクタに声をかけられる。
「おはよう龍也くん、凄く顔色がいいけど何かいい事あった?」
「へへっ、まあな!
今日の試合も楽しく頑張ろうぜ!」
そのまま朝食を食べ終わり、試合前最後のミーティングが始まる。
「はーいみんなおはよう! 昨日はよく眠れたかしら?
もうすぐ試合なわけだけど、会場には既にたくさんの観客が来ているわ。ホームのアドバンテージね!」
ホームのアドバンテージか。この大会は相手チームの観客が来れない都合上ホームだと100%の確率で観客は味方になる。応援の力は大きい、これは大きなアドバンテージだ。
だが裏を返すとアウェイ(敵ホーム)での試合は観客に味方が0、応援の声も無くなり圧倒的に不利な状況に立たされることになる。
今回の予選は4戦。順当にいけばホーム2戦アウェイ2戦という形になるだろう。もちろん全試合勝ちたいところだが、総当たり戦という形式な以上1度の負けなら取り返せる可能性がある。しかしそうだとしても今回のように有利なホーム戦で負けるという事態は避けたいところ。次回以降起こるであろうアウェイ戦で最低限の余裕を持っておくためにも今回の試合は確実に勝利しておきたい。
「じゃあ次にユニフォームとシューズを渡すわよ! 名前呼ばれたら取りに来てー」
「え? シューズって自分の使うんじゃないのー?」
「えっとね、一応シューズもユニフォームもオグレスの科学をふんだんに活用した特注品なのよ。単純な性能だと地球のものより断然優れているから使ってもらえると嬉しいわ。
もちろん各々のシューズに特別な思い入れがあるのなら無理強いはしないけど」
「そういう理由なら使わせてもらおうかなー、ありがとうフィロちゃんさん!」
そうか、科学が発展しているとこういう所でも有利になるわけか。
名前を呼ばれて取りに行く。シャツは青を基調として中心と脇下に緑のストライプがあるデザインで、パンツは青一色。なんとなく地球を表してるのかなと思ったり。
シューズは俺たちが元々使用していたものと同じデザインになっていた。ありがたい気遣いだ。
そしてユニフォームといえば気になる背番号は……じゅ、12か……。
まあ単純な実力だと他のフォワードに劣るしエース番号じゃないのは仕方ないよな……。
ってあれ? 12? 12か。12番って控えのゴールキーパーが付けるイメージだから新鮮だな。日本だとサポーターズナンバーだし。チラッと見た感じヘンディが1番でルカが13番なのか。うーん、特に理由は無いのかな。
そして次に俺は恐る恐る他のフォワードメンバーの背番号を確認する。流石に今は大丈夫だとは思うけど少しでも揉める可能性のあるものは把握しておきたい。
結果、将人が7番で凛が11番、そしてエースストライカーの証である9番にはブラドが選ばれていた。将人も凛も不満そうな顔をしていたが、今の元気のないブラドには何も言えないようで気持ちを抑えているといった様子だ。
遠くからやったあと喜ぶ声が聞こえてくる。どうやら声の主はレオとアランのようだ。レオは6番、アランは14番のユニフォームを手にしている。
オランダでは14番は重要選手につけられると聞いたことがある。アランの出身国もオランダだしそういう繋がりだろうか。
話を聞いた感じレオも同じで好きな選手と同じ背番号だそうだ。
こういう気遣いは嬉しいだろうな。
俺も憧れのガルと同じ背番号99番がよかったなあ……。
と少しだけ不満を覚えていると、奇妙なユニフォームが目に飛び込んできた。
「あれ? ファクタ、その背番号……」
「ああ、これ? 僕も初めは驚いたよ」
ファクタの番号は0番。サッカーに背番号0は無いはずだが……。今回の大会は基本的に地球のサッカーと同じかと思っていたがどうやら少しの違いはあるようだ。
「僕とフィロさんは前々から交流があってね、その関係で背番号についても事前に話聞いてたんだ。
地球のみんなと被らない背番号を選ぶことになったんだけど、そこで今回の大会は0番が選べるってことを聞いて物珍しさで選んだんだ」
「へぇー、その言い方だと元々宇宙では0番が使えてたってわけではないのか」
「そうだね。今回の大会だけの特別ルールらしいよ。理由はわからないけど」
「なるほど。まあでも確かに特殊な番号がかっこよく感じるのはよくわかる」
「0番の異質感たまらないよねぇ」
どうやら宇宙人にも地球人と同じ厨二心はあるようだ。
そういえば俺の父さんも0番のユニフォームをつけていたって母さんが言っていた気がする。もちろん父さんはサッカー選手じゃないからただのお遊びグッズだが。0番のユニフォームを見てそのことを思い出し少しだけしんみりしてしまった。
母さんも地球から応援してくれてるはず。そう思うと気持ちがまた少し軽くなった。
「渡すのギリギリになっちゃってごめんね! でも使い心地は抜群だからそこは安心して! もちろん靴擦れとは絶対起きないからね!」
「ほっほ、全員に行き渡ったようじゃの。
それじゃあ今からスタメンを発表するぞ〜。
まずは……」
アウラム監督によって発表されたスターティングメンバーとフォーメーションはこうだ。
凛 龍也 ブラド
ファクタ レオ
ヒル クレ
アラン ザシャ ペペ
ヘンディ
隣で将人がベンチなことに怒っているが、それよりもブラド。スタメンだが大丈夫だろうか。身体の弱いファクタが選ばれているのも気がかりだ。ネイトがベンチなあたり選手側の都合も考えているとは思うが少し心配だな。
「ブラド、大丈夫か?」
俺は一応声をかける。
「ああ、大丈夫だぜ。昨日の借りは絶対に返させてもらうからよ」
心なしか昨日よりは精神的に安定している様子。もちろん以前と比べたら元気はないのだが。一晩寝て多少頭をスッキリさせられたのならいいのだが……。
それに俺としても初めてのスタメンでの試合。最後まで全力で楽しみたい!
「じゃあ最後に私たちのチーム名を発表するわよ。
その前に龍也くん、この前はまだ伝えられてなかったせいで恥ずかしい思いさせちゃってごめんね」
「いえ、特に気にしてないので大丈夫です」
この前、ギガデス代表を出迎えた時のことだな。当時は一瞬焦ったがただそれだけだ。
それよりチーム名だ、どんなものなんだろう。
「チーム名はトール会長が考えてくださったの。
その名も"グロリアンズ"
……え、ダサい。
グロリ。グロリの部分が特にダサい。
いやだってグロだしロリだし、ダサ、ダサくね……?
と、思ったが、そうか。これは日本人だからダサく感じるだけで外国人からしたら別に気になることじゃないのか。
一瞬トールさんのネーミングセンスを疑ってしまった俺を許してくれ……!
「よし! チーム名も決まったところで会場に行くわよ! アプリの5番だから間違えないように! じゃあ……ワープ開始!」
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一応全員の背番号載せておきます。
1→ヘンディ
2→ペペ
3→ラーラ
4→ザシャ
5→ヒル
6→レオ
7→将人
8→ネイト
9→ブラド
10→クレ
11→凛
12→龍也
13→ルカ
14→アラン
0→ファクタ
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