第8話 モナカの暴走
「なんだかアイドルが若すぎ! みんなスレンダーだわ。これじゃナライの方が可愛い対象になっちゃう」山のようなファッション誌を片っ端から手に取って、ピザを片手に見入っている。ナライは新聞に目を通した。
政府広告で、第二世界への魂狩りツアーの募集をしていた。
次元が違うと、かすかな歪みが生じるようだ。魂狩ツアーが受け入れられるってのは異常事態だ。
「アンドロイドってさあ、セックスは可能なのね」
「だまれ、高校生が大人びた口をきくな」
「なにムキになってるの、さっき後ろから胸を鷲掴みにされて、やらせろって言われたのよ。ドレスを大勢の人の前で引き裂かれて、明日で五十歳だからってなんか泣きながら言ってた」
「まさか? やられた」
「あのメイド使える、拳銃をガーターに挟んでいたの。やっちゃえって渡された」
ーーで、やっちゃうんだ。すごいね、あたしならビクビクしているあいだにやられちゃうーー
アンドロイドは随分便利に使われているようだ。モナカが、胸が大きいのは、だいたいアンドロイドだと、テレビを指さした。
「ナライ、何したいの? 教えてくれたら手伝ってあげるわ」
「外行ってくる」
「私がお供します」執事が指を鳴らした」
屋敷のエレベーターで地下二階に降りて、ドアを開くとカプセル型の乗り物があった。
二人乗りで、後ろには荷物が置ける平たい車が連結されている。エアカーだ。
「地下鉄は上層階級しか乗れないんですよ。ナライ様はこの国では国王に次ぐ二番目の位置にいらっしゃるようで、わたしも誇らし気持ちです」
街には若者がたくさんいた。少女マンガから飛び出したようなポップでアートな若者たち。平均寿命が三十八歳。
自分たちと同じ容姿なだけに、しかも核戦争は、ほかの国ので起こって巻き込まれたのだ。その後に生まれた二世代後の人類たち。自分で魂を狩る強運の持ち主だけが長生きできる。
「ねえ田中さん、魂ってさ幾らなら買う?」
「買えればいいのですが、夢のまた夢、 無理な夢など見ない方がいいと子供たちには教えています」
貴族と金持ちが魂を入れ替えている噂が広がって、一部の特権階級だけが通行可能な道路が、地上二十メートルにパイプラインのように走っている。
地下から出た乗り物は地上二十メートル上を走り、王宮には防弾の高い塀が築かれている。平民に魂を取られるのを阻むためだ。
「国王は画面でしか見たことがありません。コロシアムがあり、多次元から迷い込んだ者はコロシアムに送られて、魂狩りのゲームを開催します」
「最悪だ、モナカのような奴だけが生き残ってしまう」
頭を使え、頭を使うんだ。
街の見物が済むと、ナライは必死で考えた。
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