第7話 モナカが襲われた

遠くからヒズメの音がした。銀河自らが馬を走らせて来た。


「だめじゃないか、モナカが街にいたよ、危ないだろ」

「モナカは王宮の兵士よりは間違いなく、強い。自分が不利になれば、どんな卑怯な手も使うし手段も選ばない」


「怖いなぁ、そうとは知らずあいつの魂を入れたらどんな薬物より危険だな、俺ならアレルギーでびっくり返りそうだ」

「魂は作り置きが一個と、せいぜい日に一つしかできない。だから魂狩りやコロシアムはまだ解除しちゃだめだからね」

「ナライそろそろ俺に魂くれよ」

銀河らしくもない、その情けない声はどこから出してるんだ。

「そこにあるでしょ、作ったの入れれば?」

「俺は君のその頭脳が必要なんだ」

「なんなら絞めちゃえば。ほれ」

「魂が汚れるから駄目だ合意の上なら」

「ならあんた死んじゃうよ、私は少なくてもあと百年生きるつもりだから」 


 百年と聞いて、銀河がソファーに崩れ落ちた。

「おまえ、死にたいって言ってたよね」

言ってたかなあ、たった一日で、自分の存在価値がわかってしまった。次元移動は快適だ。必要とされる世界を見つけたあたしはもはや、成功者だ。


この世界はあたしのもの。魂を作れるのは地上であたししかいないんだ。これって、皆んな私にひれ伏すんだよね。私は、巨大な権力を手に入れた?


いやまてよ、あたしにはできない。

意地悪されても、やり返すことが出来ない。報復が怖いんじゃなくて、相手が可愛そうになる。最大の弱点を見抜かれたら負けだ。ナライは自分の弱点を隠す方法を見つけなければならないと唇を噛んだ。


開けて、開けてよー!!!


「姫様のお帰りだ」

銀河が迎えに出て、ドアを開けた。

ボロボロのモナカが泣きじゃくっている。メイドに支えられてやっと歩いている。

ドレスはパンツが見えるほど破れて、素肌の胸が半分見えている。


「あの、こんなに大きな胸の人はいないから、アンドロイドのコールガールと間違えられて、路地で取っ組み合いになってしまいました」

「怖かったぁー」ドサクサに紛れて銀河に抱きついている。銀河が払いのけた。

「服が汚れる。シャワーだ、ほら」

メイドが「姫の強さはアンドロイド以上だ」と言ったのが気になる。


 シャワーから出て来たモナカはバスローブのまま、鼻歌を歌いながら調理プレートに張り付いて、50㎝のピザを取り出した。


「おまえ、金はあるのか? それナライのカードから支払われるんだ」

「さっきの男の魂を見物人に売ったからお金ならありますわ」

「男の魂って、おまえ、相手は誰だ」

「第五世界の方みたい。見物人が男の魂を買うって言うから メイドの護身用の銃で撃っちましたの」

「ポリスは?」銀河が青ざめた表情で、汗をかいている。


「正当防衛だって、豆腐が一丁で100円だったから、よくわからない方の魂が二千万円は妥当だわ」

「命が妥当だって、おまえ、人の命を奪ってよく平然としていられるな、とにかくもみ消さないと」

銀河が焦ってよろけながら走って行った。

「ねえ、ナライもしかして、これって夢よね、または、あんたが研究していたバーチャルなんたらでしょ」

「そうだよ、リアル過ぎる夢の中」

「ほらね、現実にこんな目にあったらショックで死んじゃう」

 モナカは結構使えるかも知れない、何に使えるかはわからないけど‥‥‥。


ドアチャイムが鳴り、メイドたちが次々と荷物を運び込んできた。

モナカはバスローブのまま執事の制止も聞かないで、現金で1000万円を支払っていた。

その財布は1000万が入るサイズってことだな。平凡な高校生が、入る札束の厚みを考えて、ショッピングをして来たとは、さすがに卑屈なナライ様を世に送り出したモナカだ。


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