第6話 ナライの目的

「ここってさあ日本なの?」

「緯度経度は同じ、国はヤマト。世界は核戦争で一度破壊されているから、鉱物資源はほとんど使わない。核を使った影響で、寿命が短いから最高齢でも五十歳。だから皆んな若くてきれいだよ。老人がいないからね」

半分くらいは理解できたかなあ、モナカはかろうじて口は閉じている。まあ少しは静かになった。ナライは話しながら、鏡に映るモナカを観察している。

「だからね、魂をきれいな汚染されていないのと取り替えたいんだ。もし上手くいけば、寿命は百歳まで延びる」


「あなた、何もいいことなかったもんね、わかるわ、あたくしだってそんな容姿に生まれ

たら絶望しちゃう。男子に見向きもされなかったら、同じことをしちゃうかもね」


な、なっ、なにをー、こいつは抹殺してよし!


とりあえず、モナカは番犬がわりに同じ部屋に置いておくことにした。急いで、魂をいくつかつくり販売する権利を手に入れる。


朝の、目覚めはなかなか素晴らしかった、メイドが朝食を用意してくれたおかげで、生まれ初めてゆっくりと美味しい朝食にありついた。


焼きたての香りのいいパンにアンズのジャム、合成肉のハムは6枚も食べた。朝食は食べない主義じゃなくて、朝一日がはじまる重圧で食欲なんかどこにもなかった。


モナカは退屈したらしく、三人のメイドの一番若そうな子とマーケットに行くんだとはしゃいでいた。

「だからお小遣いちょうだい」

「あっ、忘れてた。現金、ないんだ」

「あら、それならクローゼットのドレスメイドに売っちゃうから大丈夫」

す、すごい一秒もかからずに生きるすべを見いだす。頭脳は弱いはずなのに、皆んなをかしづかせる知恵にはたけている。

「ナライ、なんか欲しいものはあるかしら?」

ナライは、ここで生活するのに必要なものと、新聞が欲しいと言った。

「異次元世界から来たのは秘密だ、魂取られるからね。火星から一時帰還したってことにする。執事もメイドにもそんな感じで」

「了解ですわ」

朝から一時間かけて外出の準備を整えていたが、やっと馬車に乗り出かけて行った。出がけに、家のペットのシェパードに唸られたようだが、バックから何やら取り出し「ほら、お食べ、すごくおいしかったわよー」と、与えていた。


 モナカの処世術は次元上昇しても使える、多分全宇宙共通なのだ。しかも、本人もしっかり理解している。メイドや執事はモナカにとっては備え付けの家具と同じだ。すぐに、ベルを鳴らせば使えてくれることや、シーンに合わせて呼ぶ相手を変えている。


ナライはここでもモナカが脅威となることを覚悟している。うまく使えば核融合のような反応が起こるかも知れない。




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