第4話 異次元の街

ナライは魂製造装置のボタンを押した。モニターには第3ドームの中に発生した魂がブンブン飛び回っている。美しい青白い尾を引いている。

これで点滅したらホタルみたいだ。うっとりする美しさだ。


「完成した。やっと出来上がった!」


 感動的瞬間、奴らが理性を取り戻したら、この世界だけは生きやすくなるかも知れない。感動は、喜びを分つ仲間がいてこそ実感できるが、生憎のことに、心許せる相手はいない。


モニターに王様の姿が映った。音楽室の肖像画から飛び出して来たような、王様だ。仮装じゃない、フリフリのドレスシャツにゴブラン織のバルーンパンツ、王冠と勲章。

「ありがとう、あなたほど素晴らしい研究者はいない。何か欲しいものはありますか? 遠慮なく言いたまえ」

いた! 感動は物に置き換わる。対価だ。

「ずっとこっちの世界にいたいんです。あと、お城で暮らしたい。この世界の復興に協力したい、研究に夢中になっていたから、この世界のことがわからなくて」

 向こうの世界の総理大臣かなあ、それとも国家を掌握する権力を握る男か、とにかく市長よりは偉い筈だ。


 研究施設に缶詰にされていたので、街を見て回ったのは初めてだった。


 昼間は夕焼けのような赤やオレンジが混ざったような空がある。

「ね、ね、イチゴパフェの中にいるみたいですわね」お姫様ドレスに着替えたモナカは話し方もイチゴパフェになってしまった。

本来なら貴族の称号を授かっのはナライで、贈られたドレスも帽子もナライのもの。

「素敵ね、なんて美しいひらひら、あたしはこれにする。ナライはこちらが似合うから出しとくね」

あなたのものは私のもの方式は、モナカの本質で、決して治らない治療不可なのだ。ナライはそのあたりは十年前に諦めた。そして一度貸したものはわたしのものになり、貸したげると言いながら、しぶしぶ貸してくれる。


 街並みは石造りで中世ヨーロッパの街並みに似ている。でもなんか違う。

「あら、ナライあのビルなんか、墓石みたいね、ほら黒くでツルツルのやつ」

まさしく墓石だ御影石と大谷石、大理石じゃないことは確かだ。


 次元世界はどこか互いに似ているけど、微妙に違うので、なかなか移住は難しいらしい。目眩に似た感覚が常についてくる。


「ねえ私たちがいない間は向こうはどうなってるの? ママが心配しているはずよ。ナイルの母ちゃんも」

ったく感じ悪い、うちのママは母ちゃんなのか!いちいち気にさわる。絶対に意識して喋っているんだ。なにが上品で美しいのか、三分もあれば見抜けるはずなのに。


「到着いたしました。いま車寄せにつけますから」

そう、二人は馬車でお引越しをした。

石油って資源はあるにはあるが、有毒だと一般には使われていない。

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