第3話 次元上昇はあっさりと

「頭の悪い奴に説明するほど暇じゃない。ナライの邪魔をするな。家はあの丘の上だ。家の中のものは勝手に使うといい、すべてのロックは解除されている。アホのオマケはここに置いてやるから家の掃除でもしてなさい。ではナライあとはよろしく」


あっくんが消えると「ねえ、どう言うこと? ここはどこなの? あれは何者? 消えたわ、消えちゃった」

いっぺんに聞いて来る。教えて欲しいならだまっていればいいのに。


地面 はふわふわと苔を踏むような感触、こちらはスニーカーだからいいけど、モナカは可愛い革のフラットシューズ。ほらね。


「なんなのここは、ぷよぷよで足が濡れた」

「湿地帯の原生花園」

「どこかって聞いてんの」

「モナカんちの真上くらい、異次元セキュリティ完備の家だよ、ほら何もしなくても、ドアが開いたよ」


エントランスに立つと木の分厚いドアが

内側に開いた。

「いいこと、ナライ、私は入らないわ! 帰るから」

「帰れないよ。あたしがモナカを帰して上げたくならなきゃ帰れないんだ。そっちがついて来たんだからね、諦めて」

「帰るわよ、緑色の空なんて気持ち悪いし、この甘ったるい匂いも吐きそう、ね、ナライお願いだから帰して」

「だから無理だって、あたしはあっくんに魂を渡したんだ」

ナライはさっさと家のなかに入り、ドアを閉めた。

「いやあぁぁぁ」

ドアを外から叩きまくっている。ん、ほんと、頭悪いし、ナライがドアに掌を当ててるとドアは外側に勢いよく開いた。つまり、モナカはよそ者。モナカにはこの家のセキュリティシステムは解除できないんだ。勇気がある奴はモナカに教えてやってくれ、あたしはごめんだ。ナライのつくため息は、モナカを拒絶している証だ。


ドアはモナカをつき飛ばした。バカバカしいウサギのモコモコおパンツがむき出しになった。さすがにこれにはちょっと同情した。ドアを開けてやると、モナカが飛び込んで来た。


「モナカ、ご飯食べよ。ほれ、材料パネルから選んでメニューボタンを押せばこっちから出てくる。あたしは二階にいるから用事があれば呟けば聞こえる」


あっくんと、何度か接触して、住む所も、第六世界の情報もだいたいは知っている。

「なんなの、なんだって言うのギャ! うわーん材料なんてわからない。ナライ、助けてー、怖いじゃないの、誘拐されたのぅーわぁー」


これほど使いものにならないのにね。世の中の男供は、女になにも期待していないってこと? いや容姿しか希望がないわけだ。アンドロイドだって、男が作ればFカップだ。混雑した電車にぷるんぷるんがじゃまなだけだ。

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