第24話 Elise-conversation-かんばせ-Genovese!4
火を起こすこと事態は良い案だ。焼け落ちると困るが、煙で燻すくらいなら効果有りだ。建物を傷つけず無効化出来るからな。
癖歪み褌のスキル《火遁・上》によって火や煙に耐性を付け、密閉した部屋で煙を溜めて潜む。格上
肉球の摺り足が聞こえ、扉に手を掛ける音がした。瞬間、
ドゴンッとドアが爆発。煙が空気を求めるように入り口に殺到し、一瞬炎が吹き出した。なんじゃあこりゃ!こちらは火遁の効果でダメージはなかったが。予想外の奇襲になってしまった。正しくおっとり刀で入り口を抜け衝撃が収まらないうちに追撃をかける。
最後尾にズタ袋少女。相手の熱を奪う冷気魔法で後方支援。それを守るように邪聖少年。こちらはベルトを調整して盾を肘で固定、ズタ袋を庇いつつボウガンでこちらを支援だ。癖歪み忍者は投げ損なった苦無手裏剣を全部撃ちきり、そのままハイディング状態に移る。俺は投げ棍棒と石をぶん回してから
副官
6匹目、推定女傑の雌隊長
「裏切り者か!なんたるビッチ!…そ、そんなにそこの御仁は立派なのか?」
「ち、違うでゴザル!拙者は
お互いに間合いを離し、そのまま不利と見た狗隊長がもと来た道を引き返す。仕切り直される訳には行かないので羽と尾も使い無理やり体を捩じ込み立ち塞がってやった。
「どけい御立派ぁ!」
「何か
剣を振る距離でも無いのでお互いに得物は手放さずしかし相手の手首や重心を奪い合う。主導権を握られたらそのまま命も奪われてしまうので地味でヒリついたやり取りだ。悪漢っぽくて楽しい。
「先ほどの両手剣加速装置。お前こそがウワサの
例の再戦希望な刀剣
「捕まえて、その御立派さを確かめてやる!」
「是非ともお願いしまぁす!」
しかし残念。こちらには羽と尾のぶん、取れる手段が多いのだ。目を羽ではたき、尾を尾で縛り、慮外の搦め手でズラされた狗尾草を組み敷く。そこではたと、致命的なことに気付いた。
「隙有りぁ」
僅かな緩みを見逃さず、
「ぐっ」
《もちもの鞄》の奥底にしまっていた一本の藁を咄嗟に投げつけた。針のように
大怪我しつつ、そのままマウスtoマウスならぬマウスtoノーズ。鼻からじょぼじょぼと猛毒体液を流し込み、確実に殺す。ついでに舌先で鼻粘膜と接触してドレインも仕掛ける。
「美事。しばらくこの修練所はくれてやる。必ず若者たちに奪い返させる。それまで牙を研いで待っていろ」
毒にヤられながら気丈にそう吐き出し息絶えた。6匹目。
正体バレてしまってるのでいずれ砦は引き払う予定であるが、しかしとりあえず、防衛成功だな。藁持ってて良かった。一応、おねーさんからの貰い物だし捨てるわけにもいかないから鞄の肥やしになってた。
と、そこで気付いて慄然とした。藁で砦を手に入れてしまったのだ。書き起こした地図の間取りを見れば、ここは屋敷、武家屋敷、と言えなくもない。藁を屋敷と交換。宿屋のおねーさんの戯言が、現実に。
か、か、神よ。おおかみよ。
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