第16話 B-T-Beauty-Brother-Boozing!
主義者リスト読んでたら墓場の腹パンした経験値神官と闘技場の癖歪めガタイ武家が載ってた。初対面グール呼びは恐怖と墓荒らしの蛮行のせいじゃなくて普通に蔑称だったのかもな。だから宿屋のおねーさんセーフって言ってたのか。まあ、今となっては
図らずも腹パンはリストから削除か。癖歪めの方は、確実に寝返らせるか。
しかし、経験値にして良いよリストなのに既に二人使い物になんないから、何か損した気分である。
受付おねーさん宅のリビングでホットミルク飲みながら紙めくってたら邪聖少年が帰ってきた。道中ハチャメチャに汚れたので二人で井戸端で水浴びしていたのだが、まあ、そりゃあより汚れるよねって話だ。洗いっこしてたらいつまでも終わらないので先に帰ってきた次第、というわけだ。悠々1人で洗い流しさっぱりした顔をしている。邪聖少年も死なないとわかって大分図太くなってきたな。
「ああ、計画練っていたの?確かにこれだけの人数集めたら組織運営大変だものね。将来の幹部として何人か育成してみたら?教会とか領地とかは、大人になってからどうにかするとして、今は人材だね」
頭が回りすぎて困る。そこまでこっちは考えてねえ。俺に明日はない。今日だけだ。悪漢しぐさである。
しかしそうか、こいつら宗旨替えさせるならそりゃ俺の信者になるんだよな。帰属意識が村やら家やら他派から俺になるんだよな。返さなくても良いんだよな。
サキュバス的センサーだよりに夜の街を飛ぶ。ほぼほぼ悪魔たる俺はイメージ次第、出来て当然と思うことでいくらでも第六感に目覚め、翼で飛行も可能になる。目からビームとか口から炎も出せるように成るのかもしれん。だとしたら《
頭と矜持を悩ませていると体は訓練所に向かっていた。あいつ、夕方負けて悔しかったのか、深夜こっそり鍛練していたらしい。いや、煩悩を振り払うためかな?むふふ。青春だねえ。
「よう、休まないと強くなれないぜ」
「…貴殿か」
「あとはメシだな。俺ミルク出せるんだけど飲むか?」
栄養満点、B印乳飲料である。BはB-T、Beauty、BrotherのBである。成分が度々混ざるので表記をぼやかすしかないのだ。生ものだから仕方ない。
「子、お子の分が、な、なくなるだろう」
いや、産んでねぇよ。なんで産めると思ってんだよこいつ。いやたしかに、普通産まんと出ねぇもんな。
「あー、これはあれだ。俺の信徒たちを俺の子と定義して、母が子を慈しむようにこれを与えなさい、と、神職からのありがたい御告げがあって、そして俺のケイケンな祈りによってそのようになったのだ」
嘘は言ってない。すまん。やっぱりほぼほぼ嘘だ。ハーブティー飲みやすくしたかっただけだ。
「お前ん家、
こいつのリスト入りの理由はそうだった。親はあくまでビジネスライクに、土地の安堵、情勢読みのために排除にまわり、困ったことにこいつは寄り親に感化されて
「私の代で変えてみせる」
まだるっこしい癖歪みである。悪漢に明日はない。
「いや、俺に帰依しろ今ここで」
家を捨てろ裏切れと言っているので武家の高等教育を受けたこいつはそのままでは理性で断る。
しかしこちとらサキュバスの
ロングコートをはだけ上裸になる。イメージが重要なので母性的に聖的に胸を膨らませてからご開帳した。母恋し子供と人恋し若者の中間たるこいつは何とも言えない、複雑な感情が噴出した顔でこちらを見ている。
ガタイの良いこいつは肉体も早熟だが精神も早熟に過ぎ、そして未だ未熟なのだ。子供のように無邪気には成れないし家のために尽くせるほど自我を押さえられない。
「初心者の街からの冒険は、人によって場所によって2、3年か4、5年か。時には死ぬこともある。その間にここで地盤を固めれば良い。どうせ兄弟姉妹で家督争いしてるだろお前のとこも」
過去生を繰り返すこの時代は、その生に依るが度々激動に見舞われたものだ。
心のノートにも、血の記憶がべっとりこべりつき、開くことのできないページがいくつもある。無理やり剥がせば心まで引き裂かれてしまうような。
繰り返しこの時代を生きる理由は、もしかしたらそこら辺に関係があるのかもしれない。
「飲みなさい。我が子、我が兄弟よ」
我が血にして肉を。
さあ。
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